Diagnostic Excellenceとこれからの展望、そして本大会の見どころ
2021年より世界的に拡散しているDiagnostic Excellenceイニシアチブ-つまり、患者体験や診断の不確実性を管理しながら、安全かつ最小限の資源で正確な診断を行い、それをタイムリーに患者に説明することを目指す-という潮流は、我々病院総合診療医にとってどのようなインパクトがあるのだろうか?当初この声明が出されたのはInstitute of Medicineからの1999年、それに続く2015年のレポートの流れを受けたものである。主に米国発のムーブメントだが、「海外ではこうなので、日本でも~」の論調は、このスピード感あるWeb3のボーダレス世界においてあまり意味をなさないだろう。アイディアの創発は実際そこここに溢れているし、昨今の医療業界における診断領域はまさにそのhot spotとなっている。ただ、あえて言えば日本の旧来よりの臨床診断に対する全国的な熱はとくに総合診療領域において高く、私たちにとってはDiagnostic Excellenceという概念も至極当然であり、日本というより特に総合診療界隈のクラスターの持つ診断への熱量は世界におけるdiversityとして十分に尖った独自性を持つだろう。そのような文化で過ごしてきた演者が感じるのは、改めて世界の診断業界のアイコンたちと交流をする中で、その独自性がよいドライブとなり新たな世界の潮流をさらに加速して作ることができるだろう、という新たなる希望である。日本と世界という対立構造ではなく、むしろ我々の診断文化と世界のAugmentationの関係で、世界をリードするような立ち位置で私たちチームは志を貫き、世界に覚醒と夜明けをもたらせたいと、当学会「良質な診断」チームのディレクターとして演者はいつも考えている。本セッションは30分と短い中で、本大会テーマのDiagnostic Excellenceの概要に簡単に触れ、そのうえで診断学の機関誌であるDiagnosisのEditorialに掲載した現場の臨床医が目指すべき診断能力の定式化をもとに、今後さらに学術的に深めていくべき様々な領域とその可能性について言及し、そのテーマを貫通させた本大会に込めた様々な構成の工夫や参加の楽しみ方を概説したい。30分という短い時間で納めきれるかが本セッションにおける演者としての最大の不安だが、そのような葛藤のアングルも踏まえ、ぜひお楽しみにご視聴されたい。