不明熱へのアプローチ~腫瘍専門医の立場から~
不明熱の鑑別診断として、腫瘍熱はよく知られた鑑別診断になるが、その実態はよくわかっていない。ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性白血病、腎癌は腫瘍熱をきたす代表的な悪性腫瘍であるが、それ以外の悪性腫瘍でも腫瘍熱をきたす。腫瘍熱が起こる機序は十分には明らかにはなっていない。これまで、interleukin (IL)-1、IL-6、tumor necrosis factor (TNF)-α等のサイトカインが視床下部の前視蓋前核の体温調節中枢のセットポイントを上昇させることが明らかにされてきた。しかし、感染症の場合でもサイトカインの関与を認めることから、腫瘍熱の特異的な機序に関しては不透明なままである。腫瘍熱の臨床的特徴であるが、感染症では悪寒戦慄を伴うスパイク熱や発汗、頻脈、低血圧を伴う発熱をしばしば認めるのに対し、腫瘍熱では悪寒戦慄や頻脈を伴うことは少ないとされている。
腫瘍熱の診断には、感染症やアレルギーの否定が必要であり、総合的な判断が大切となる。発熱初診時から腫瘍熱と判断することは困難な場合が多い。ナプロキサンテストやプロカルシトニンが腫瘍熱診断の一助になる可能性がある。
Zellらが提唱している腫瘍熱の診断基準(Support Care Cancer ; 13; 870-877, 2005)は、1.1日の中で、最低でも37.8度を超える発熱を認めること、2.発熱の期間が2週間を超えること、3.以下の点で感染症の存在が否定されていること、身体所見、血液検査や各種培養などの細菌学的検査、X線検査やCT検査など画像検査、4.アレルギーによる発熱ではないこと、5.最低7日間の広域抗生剤で解熱しない、6.ナプロキサンによって解熱がえられること
この診断基準から、腫瘍熱の診断は感染症とアレルギーの除外の上に成り立っていることがわかるであろう。当日は、具体的な症例を提示しつつ解説していきたい。