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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[N-006] 急速に増悪する両下肢筋力低下を認めた血管肉腫硬膜内髄外転移の一例


【背景】血管肉腫に遠隔転移を生じた場合の予後は平均生存期間6~8ヶ月と非常に悪い。血管肉腫の硬膜内髄外転移は我々の検索しうる限りでは報告はなく、非常に稀と思われる。一方、オンコロジー・エマージェンシーは悪性腫瘍の経過で急速に全身状態の悪化を来し、緊急検査及び治療を必要とする病態を指す。今回、我々はオンコロジー・エマージェンシーを来した血管肉腫を経験したため報告する。
【症例】42歳男性。
【主訴】両足の痛み、痺れ、脱力。
【病歴】生来健康。3 ヶ月前より左半⾝に違和感を⾃覚し、2ヶ月前より右側腹部に⽪下結節が出現した。1ヶ月前より座位で増悪する臀部の痛み及び下肢のしびれが出現、増悪した為、当院紹介入院となる。
【所見】身体診察にて全身状態良好。血圧168/111mmHg、脈拍88/分、体温36.7℃。右側腹部に4cm大、弾性硬で可動性不良な半球形の皮下腫瘤あり。左側腹部にも径1㎝程度の皮下結節を2つ認める。 SLR試験は両側陽性。上肢、体幹はMMT5だが、大腿四頭筋より低位はMMT3程度だった。膝蓋腱、アキレス腱反射は低下。バビンスキー反射陰性。血液検査で特記所見を認めず。造影CTで多発肺結節及び体幹の皮下に多発軟部腫瘤あり。腰椎L3-S1の硬膜内に造影効果のある腫瘤あり。
【経過】両下肢疼痛及び急激に悪化する神経症状は硬膜内腫瘤が原因と考えた。速やかに放射線療法及びデキサメタゾン内服を開始し、症状は徐々に改善した。皮下腫瘤の生検で血管肉腫と診断した。患者、家族は積極的治療を望まず自宅での終末期医療を望んだため、予後も鑑みて早期の自宅退院とした。
【考察】本症例は全身転移を来しており、予後は非常に短いことが予想された。初診時、両下肢疼痛及び痺れ、脱力を認め、造影CTで早期診断に至った。硬膜内髄外転移による脊髄圧迫で両下肢痛、歩行不能となっていたが早期介入で歩行器歩行可能となり、QOLが改善した。【結語】急速に進行する脊髄レベルの神経症状を認めたら脊髄腫瘍を念頭に置き、早期に画像診断および治療を行う必要がある。

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