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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[N-002] 急性冠症候群疑いで紹介受診し,初療室で2型呼吸不全,心停止に至った重症筋無力症クリーゼの一例


【背景】重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)は骨格筋の筋力低下及び易疲労感を特徴とする神経筋接合部疾患の1つである.特に急激に呼吸筋麻痺が増悪し人工呼吸器管理が必要となる状態をMGクリーゼと呼び,2型呼吸不全の原因となる.【症例】高血圧に対して内服があるADL自立の84歳女性【主訴】2型呼吸不全精査目的【病歴】数日前からの咽頭違和感と労作時呼吸苦増悪で前医を受診し,トロポニン陽性のため急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)疑いで当院へ紹介搬送された.初療中にPEAとなり経口気管挿管し,蘇生後に循環器科へ入院した.しかし,冠動脈造影・左室造影で異常なく,CPAPモードでは低換気,2型呼吸不全となるため原因精査目的に当科転科となった.【転科時所見】右優位の両側眼瞼下垂あり,複視なし,挿管され臥位のため首下がり評価困難.動脈血ガス(CPAP, FiO2 0.25):pH 7.49,PaO2 79.9mmHg,PaCO2 48.3mmHg,HCO3- 32.7mmol/L.胸部CT:胸腺腫なし,頭部MRI:脳血管障害なし.【経過】転科時に右優位の両側眼瞼下垂があり,30秒反復開閉眼で眼瞼下垂の増悪を認めた.アイスパックテストとテンシロンテストは陰性だったが,抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体82nmol/L(陽性)であり,MGクリーゼの診断で大量ガンマグロブリン静注療法とプレドニゾロン10mgを開始した.開始翌日よりCO2貯留は改善,その後人工呼吸器管理を離脱し,眼瞼下垂も消失した.【考察】本邦ではMGの初発症状として,眼瞼下垂(71.9%),複視(47.3%),頚部四肢筋力低下(23.1%)などが多く呼吸筋麻痺単独は稀である.本症例では診断後に家族から聴取したところ眼瞼下垂や首下がりのエピソードを聴取できたが,家族は心停止の原因と関連があるとは考えておらず当初医療者には話していなかった.原因不明の2型呼吸不全の際でも,発症前の詳細な病歴聴取が診断に有用である.【結語】ACS疑いで紹介受診し初療室で心停止に至ったが,眼瞼下垂と2型呼吸不全からMGクリーゼと診断し治療介入できた一例を経験した.

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