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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[N-008] 末梢血塗抹標本のbite cellがジアフェニルスルホンによる薬剤性溶血性貧血の診断に有用であった1例.


【背景】薬剤性溶血性貧血は溶血性貧血の稀な原因として知られている.薬剤性溶血性貧血の原因としてジアフェニルスルホン(DDS)が知られている.今回,末梢血塗抹標本でbite cellを認めたことがDDSによる薬剤性溶血性貧血の診断に有用であった症例を経験したので報告する.【症例】91歳男性.【現病歴】来院の4カ月前から全身の掻痒感を主訴に皮膚科に通院していた.来院1カ月前からDDSが処方されていた.来院1周間前にふらつきと脱力感の訴えで外来を受診しヘモグロビン9.3g/dlと貧血を認めたが経過観察となった.来院日に体動困難を訴え,外来を受診した.【所見】バイタルは正常範囲内で頭部に粃糠状鱗屑を認めた.四肢・体幹に紅斑を認めた.ヘモグロビン 6.9g/dl, MCV(平均赤血球容積)116.1flと大球性貧血を認め,末梢血目視では破砕赤血球を認めた.乳酸脱水素酵素475U/I,総ビリルビン1.74mg/dlと肝障害を認めた.【臨床経過】急激な貧血進行と乳酸脱水素酵素上昇から溶血性貧血を疑ったが直接クームス試験は陰性であった.破砕赤血球を認めたがADAMTS13活性が34%と高値であり,血栓性血小板減少性紫斑病は否定的であった.DDSによる薬剤誘発性溶血性貧血を鑑別に挙げ末梢血塗抹標本のギムザ染色を施行したところbite cellを認め,さらにブリリアントグリーン染色でもHeinz小体の凝集を認めた. 以上よりDDSによる薬剤性溶血性貧血と暫定診断しDDSを中止したところ貧血は改善し,1ヶ月でヘモグロビンは正常化した.【考察】DDSは薬剤性溶血性貧血の原因となる.DDSは皮膚科領域では多用されるがそれ以外の領域では処方頻度が低く,さらに薬剤性溶血性貧血を認めることは周知されていない. DDSによる診断には末梢血塗抹標本におけるbite cellとHeinz小体の凝集の証明が有用である. DDSの酸化作用でヘモグロビンを変性しHeinz小体が凝集させる.脾臓でマクロファージがHeinz小体を標的として赤血球を除去する際にbite cellが形成することで溶血にいたるとされている.【結語】末梢血塗抹標本におけるbite cellはDDSによる薬剤性溶血性貧血の診断に有用である.

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