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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[N-009] 突然の脂質異常から、胆汁うっ滞型肝障害を疑った続発性ヘモクロマトーシスの1例


【背景】胆汁うっ滞型肝障害は、リポプロテインXを介在し脂質異常を来すことが知られている。今回、続発性ヘモクロマトーシスの症例を経験し、ヘモクロマトーシスの肝障害が胆汁うっ滞型である可能性を考察したため、報告する。
【症例】78歳女性 【主訴】全身倦怠感、黄疸 
【病歴】入院する9年前から大球性貧血に対して、鉄製剤と葉酸の内服を行っていた。入院する3ヶ月前から、以前には見られなかった脂質異常症が指摘された。入院する2週間ほど前、全身倦怠感があり前医を受診した。血液検査で、貧血の進行、黄疸、脂質異常を指摘され、紹介され入院した。 
【所見】身体所見;眼瞼結膜蒼白、眼球結膜黄染、皮膚は黄染。 血液検査所見;ヘモグロビン 5.3g/dL、総ビリルビン5.4mg/dL、直接ビリルビン3.6mg/dL、総コレステロール 617mg/dL、中性脂肪432mg/dL、HDLコレステロール17mg/dL、LDLコレステロール34mg/dL 体幹部造影CT;肝・脾は軽度腫大、肝に占拠性病変なし、胆嚢・胆管拡張なし。 
【経過】入院後、濃厚赤血球輸血を行い、経口鉄剤は中止した。骨髄検査で、赤芽球系細胞の減少を認め、赤芽球ろうと診断した。肝MRIのT2強調像で、肝実質の信号低下を認めたため、肝生検を行った。病理組織検査で、肝細胞に鉄の沈着を認め、長期の鉄剤内服による続発性ヘモクロマトーシスと判断した。その後、シクロスポリンとデフェラシロクスによる治療が行われ、肝障害・大球性貧血は改善した。突然の脂質異常は、文献的にリポプロテインX増加による影響と考察し、経過観察する事とした。脂質異常は、原病の改善とともに自然軽快した。 
【考察】リポプロテインXは、胆汁うっ滞型の肝障害で出現することが知られ、脂質代謝異常を引き起こす。本症例の治療経過から、リポプロテインXの介在を考えると、本症例の肝障害が胆汁うっ滞型である可能性がある。
【結語】ヘモクロマトーシスの肝障害が、胆汁うっ滞型であることが考察される1例を経験した。

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