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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[N-005] 下腿浮腫、下肢痛の主訴から診断に至った多発性骨髄腫の1例


症例は78歳の女性
68歳時に胃癌に対し幽門側胃切除施行され以後も定期的にフォローを受けていた。その他、坐骨神経痛、糖尿病、貧血、甲状腺機能低下の診断に対して近医より鉄剤、緩下剤、甲状腺ホルモン剤の処方を受けていた。
X年7月右下肢痛を主訴に整形外科を受診。腰椎MRIで右L5/S1椎間孔内ヘルニアに伴うL5の神経根症状として鎮痛薬を処方された。内服開始後から両下腿を中心に浮腫が出現した。徐々に倦怠感も出現し歩行が難しくなったため前医へ入院することとなった。利尿剤投与を行いつつ浮腫の原因検索が行われたが、内科的な疾患は否定的との見解であった。体重減少も5kg/3ヶ月と進行しており、CT検査も行われたが、粗大な内臓疾患の指摘はなく腰椎肋骨など多発の骨病変を認めた。入院後浮腫は経過傾向にあったが、倦怠感は増悪し貧血も進行、便潜血検査陽性、腎機能の低下も見られたため原発不明癌の骨転移の疑い当院へ10月初旬紹介受診となった。
来院時は、下腿の浮腫はほぼ改善していたが背部及び側胸部に強い自発痛有り、歩行時は腰部正中から両臀部にかけて強い痛みがあり歩行は困難であった。意識障害を含めてバイタルの異常はなく、採血では正球性貧血とさらなる腎機能悪化、CRPに比して著明な赤血球沈降速度の上昇を認めた。持参の画像を再度検討したところ整形外科受診時のMRIで腰椎の溶骨性変化を認めており、治療抵抗性の貧血に加え急速な腎機能の悪化と高度の尿蛋白所見から多発性骨髄腫の可能性を考えた。一方で、胃癌術後の便潜血陽性であり再度上部内視鏡を再検したがやはり再発所見は認めなかった。PET-CT及び外注での蛋白電気泳動検査、免疫グロブリンL鎖などを行い翌週には多発性骨髄腫と診断することがでた。
本症例は、振り返ると比較的典型的な多発性骨髄腫の経過のようにも思われるが、既往疾患や専門医の診断が先行し診断まで遠回りした印象も否めない。総合診療的な観点から症例を振り返り、どの時点でどういった介入が可能であったか検討する形で症例を報告したい。

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