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2月18日 (土)

プログラム

抄録





小児外来診療での総合的診断戦略


小児診療の困難さの特徴は、急変が多い、診察困難、検査拒否、コミュニケーション不足、保護者の不安などがあげられる。主に成人医療をしている医師にとっては、疾患の疫学的な頻度の違いが問題になる。
また、外来受診数が多く、一人にかけられる時間が少ないにも関わらず、保護者からの正確な診断への要求は高いことが臨床医にとって負担になっている。
小児の診断戦略は、成人と共通のdual process theoryに基づいているが、ほとんどが軽症で時間的制約が多い現状に適していないかもしれない。近年は、人工知能を使ったデジタル診断も実用化されてきているが、小児の疫学情報が十分ではないため、臨床使用に耐えるものは一般に普及していない。
演者は開業医としてのべ数十万人の小児患者を外来診療してきた経験から総合的な診断戦略として、まず、イルネススクリプトを使った積極的診断と、致死的な見逃しをしないために最悪のシナリオを考えておくpivot & cluster strategyの両方を活用している。このアプローチでたいていの外来患者の訴えに対応できるが、病歴や身体所見に違和感があれば思考回路の切り替えをする。そして、分析的思考を使って、疾患頻度が高いものと低いもの、典型的か非典型的かの4分割で鑑別診断を考える。そのとき、小児特有の疾患として、例えば、先天性疾患を鑑別診断にあげておくことが重要である。逆に小児では稀である悪性腫瘍や血管障害は診断遅延につながりやすいことにも留意しておく。どの領域の専門家に紹介するのかを決めるためには一般的な臨床検査が役立つ。症例によっては、入院による経過観察など外来診療を中断するほうがよいときもある。入院適応がなく一度の外来診療で診断がつかない場合は、「もう一人の患者」である保護者と協働すること(patient engagement)が有効である。

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