[O-018] サーモンピンク疹を伴い、成人still病との鑑別を要した血管内リンパ腫の一例
【背景】血管内リンパ腫(Intravascular lymphoma; IVL)は多彩な症状を伴うリンパ腫で、不明熱の重要な鑑別疾患である。今回、サーモンピンク疹を伴い、成人still病(adult onset Still’s disease; AOSD)との鑑別を要したIVLの一例を経験したため報告する。【症例】81歳男性【主訴】発熱、皮疹【病歴】X月Y-8日に、発熱、体動困難で前医搬送となった。ABPC/SBT、VCMでの抗菌薬治療に反応せず、両側足背の発赤や、Y-2日時の採血でCRP、フェリチン、sIL2-Rの高値を認め、Y日に当科転院した。【所見】体温 36.7℃、脈拍 103回/分、血圧 98/57 mmHg、SpO2 98%(O2 3L/分)、呼吸数 24回/分。胸部、腹部、両側大腿、前腕部に皮疹を認めた。WBC 20,000/μL、Hb 11.6 g/dL、Plt 36,000/μL、LDH 702 U/L、フェリチン 9429 ng/mL、sIL2-R 5282 U/mLで、造影CTでは腫瘤性病変・リンパ節腫脹を認めなかった。【経過】皮疹はAOSDに典型的なサーモンピンク疹と判断され、AOSDのYamaguchiらの分類基準を満たした。しかし、sIL2RやLDHの高値からはIVLも否定できず、ランダム皮膚生検と骨髄穿刺を施行した。感染性疾患は経過・所見から否定的で、血圧の低下や血小板の減少の急激な進行もあったため、暫定的にAOSDとして入院同日よりステロイドパルス療法を開始し、血小板輸血、血漿交換を行った。Y+7日に皮膚検体で病理学的にIVLと確定診断した。【考察】サーモンピンク疹は一般的には解熱とともに消退する淡い紅斑であり、AOSDに典型的な皮膚所見とされる。一方で、IVLはリンパ腫細胞が血管の管腔内で発育し、多彩な臨床像を呈するが、IVLに典型的な皮疹はない。既報の症例報告において、サーモンピンク疹をきたすIVLの症例報告はない。本症例では、膠原病専門医も含めて典型的なサーモンピンク疹と判断される皮疹ではあったが、AOSDの診断にはリンパ腫を含む悪性腫瘍の除外が必要であることを念頭に皮膚生検を行ったことでIVLと診断できた。【結語】AOSDに典型的なサーモンピンク疹であっても、不明熱診療ではIVLを常に鑑別疾患に挙げ、検査する必要がある。