[O-022] IgG4関連疾患とANCA陰性ANCA関連血管炎が合併し,診断に苦慮した一例
【背景】IgG4関連疾患は稀にANCA関連血管炎を併発することが知られているが,ANCA陰性の血管炎も存在する.【症例】76歳,男性.【主訴】発熱.【病歴】くも膜下出血に対する脳動脈瘤クリッピング術後に発熱,高CRP血症が遷延した.抗菌薬治療に不応であり,不明熱の精査目的に内科コンサルトとなった.【所見】意識清明.血圧 169/70 mmHg,脈拍 104回/分,呼吸数 20回/分,SpO2 97%(室内気),体温 38.5℃.身体所見に特記すべき異常なし.血液所見:白血球 16,000/mm3,CRP 13.05 mg/dL,Cr 0.76 mg/dL,BUN 19.5 mg/dL,IgG4 598 mg/dL,IgE 655 IU/mL,C4 9 mg/dL.抗好中球細胞質抗体:陰性.抗核抗体:20倍.抗SS-A抗体:陰性.尿所見:蛋白 2+,潜血 3+,白血球(-),L-FABP 342 μg/g・C.血液培養:陰性.尿培養:陰性.腹部CT:両腎実質に造影不良域が散在.腎MRI:特記すべき異常なし.ガリウムシンチグラフィ:両側耳下腺に異常集積あり.【経過】腹部CT所見に関して,尿培養陰性,抗菌薬不応性から巣状細菌性腎炎の可能性は低いと判断した.血清IgG4高値,血清IgE高値,低補体血症,尿中L-FABP高値を認めたことからIgG4関連腎臓病を疑い,腎生検を施行した.病理所見では,フィブリノイド変性を伴う壊死性血管炎と局所的な尿細管間質性腎炎及び,同部位にIgG4産生性が90%近くを占める形質細胞の浸潤を認めた.以上から腎および耳下腺に病変が存在すると推定されるIgG4関連疾患とANCA陰性ANCA関連血管炎の合併と診断した.プレドニゾロン0.75 mg/kg/日の投与を開始したところ速やかに解熱とCRP値の低下を認めた.【考察】高CRP血症などIgG4関連疾患に非特異的な所見を認めた場合は,積極的に病理診断を行う方が良い.本症例は,病理診断により発症初期のIgG4関連疾患と,ANCA陰性ANCA関連の合併の診断に至り,早期治療介入に成功した.【結語】IgG4関連疾患は,血管炎や悪性リンパ腫など臨床上鑑別を要する疾患が多数存在するため,病理診断でIgG4産生形質細胞の臓器浸潤の有無を判断することは診断エラーを防ぐために重要である.