[O-024] 不明熱の精査で骨髄異形成症候群(MDS)によるundifferentiated autoinflammatory disease(UAD)と診断した一例
【背景】骨髄異形成症候群(MDS)患者の発熱診療では,白血球減少症や機能異常による感染症が第一に疑われる。一方で特異的な症状を呈さない自己炎症による発熱例では診断に難渋することが少なくない。【症例】72歳男性【主訴】周期性発熱【病歴】2016年に前医で多血球系列の異型を伴うMDSと診断され,エリスロポエチン製剤の投与と定期的な赤血球輸血治療で経過観察されていた。2021年12月頃から誘因なく20~30日の周期で両側の顎下腺周囲の疼痛を伴う38度以上の発熱を来すようになった。前医では,毎回の血液培養検査は陰性であり,画像検査上も熱源は明らかではなかった。反復性顎下腺周囲感染症の診断で抗菌薬加療を施行され,数日で解熱する経過を2022年4月下旬頃まで繰り返していた。同年5月下旬に当院感染症内科外来に紹介となった。受診3日前から39.4度の発熱と嚥下時の右頚部痛,両上腕の筋肉痛を自覚していた。【所見】悪寒戦慄を伴う39.4度の発熱,右頚部の圧痛を認めた。顎下腺の腫脹を認めなかった。血液検査では白血球 6500 /μL,CRP 14.8 mg/dL,抗核抗体価 40倍(斑紋型)だった。頚部~骨盤部造影CT検査では特記すべき異常を認めなかった。【経過】入院後は抗菌薬を投与せずに経過観察し,入院翌日に36.8度に解熱した。血液培養検査は陰性で,入院後の精査で特異的な膠原病疾患を示唆する所見を認めなかった。MDSによるundifferentiated autoinflammatory disease(UAD)と随伴する筋症状と考え,第6病日からシクロスポリンの内服を開始した。筋症状は緩徐に軽快し,第16病日に退院した。退院4日後に再度発熱を認め,外来でステロイドの内服を開始し,以降は発熱を来すことなく経過した。【考察】MDSでは血球減少や白血球機能異常による免疫力低下が生じることは広く知られているが,自己炎症による発熱を呈しうることが近年報告されている。MDS患者の発熱で感染症の経過に合わない場合,また高齢者で血球減少を伴う自己炎症疾患を発症した場合は本症を鑑別に挙げる必要がある。【結語】MDSによるUADの一例を経験した。