[O-021] コロナ禍において発熱を主訴に来院した産後女性の進行性悪性腫瘍の2例
【背景】COVID-19パンデミックにより、国内外でがん診断の遅れが問題になっている。今回産後の高熱で来院し、進行性悪性腫瘍と診断された症例を複数経験したため報告する。【症例1】29歳女性【主訴】発熱【既往歴】なし【現病歴】X年12月に出産。X+1年1月から発熱・倦怠感出現し、近医を受診。COVID-19 PCR検査陰性のため、経過観察となっていた。症状継続するため、X+1年1月末日に当院総合診療科受診となった【身体所見】体温37度、心窩部に圧痛著明、反跳痛あり。【検査結果】WBC 21960/μl, Hb 7.4g/dl, Plt 71.4×104/μl, CRP 22.26 mg/dl, TP 7.3 g/dl, Alb 3.9 g/dl, T-Bil 0.67 mg/dl, AST 92 IU/L, ALT 43 IU/L, γ-GTP 363 IU/L, LDH 1302 IU/L, AMY 100 IU/L, 肝-骨盤造影CT:直腸に腫瘤あり, 直腸傍リンパ節多数腫大, 肝両葉に腫瘤散在, 腹水あり【直腸生検】adenocarcinoma【経過】診断時すでに大腸癌stageⅣであったため全身治療の方針となった。化学療法1クール終了後、有害事象なく過ごされていたが、病勢は抑えられず、X年3月に永眠された。【症例2】37歳女性【主訴】発熱・腰背部痛【既往歴】なし【現病歴】X年1月に出産、産後、発熱・腰背部痛出現。近医整形外科を受診し、産後腰痛として非ステロイド性消炎剤を処方された。その後、症状が悪化し、X年4月に当院総合診療科受診となった。【身体所見】体温38.5度、背部叩打痛あったが、そのほか特記所見なし。【検査結果】WBC 6970/μL, Hb 9.2 g/dL, Plt 45.8×104 /μL, CRP 22.89 mg/dL, T-Bil 0.29 mg/dL, AST 30IU/L, ALT 21IU/L, γ-GTP 44 IU/L, LDH 217 IU/L, 造影CT:肝及び脾臓に多発する腫瘤影あり。左心房内を占拠する不均一に造影される腫瘤を認めた。脊椎に溶骨性変化・造骨性変化が散見された。【肝生検】non-small round cell sarcoma疑い。【経過】化学療法の効果の乏しい組織型であったが、ご本人・家族の強い希望で化学療法を1クール開始。しかし、ご家族より高度専門診療を希望され他院に転院となった。【考察】今回の2例は診断時に既にStageⅣの進行性悪性腫瘍であった。①パンデミック下の発熱、②出産後、③若年である等のヒューリスティックやバイアスによる診断の遅れに繋がった啓発的な症例である。