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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[O-023] 不明熱を主訴とし、甲状腺局所の症状に乏しかった高齢発症橋本病合併亜急性甲状腺炎の一例


【背景】総合診療科では不明熱の患者が多く受診される。今回、橋本病に亜急性甲状腺炎を重複して発症したが甲状腺の局所症状に乏しく鑑別が困難だった症例を経験したので報告する。【症例】85歳男性【主訴】発熱・咽頭痛【現病歴】X年4月下旬から微熱が持続、5月15日に喉の奥の痛みを自覚し以後徐々に増悪した。6月1日に当院耳鼻咽喉科を受診し、咽頭カンジダ症を指摘され抗真菌薬を処方された。発熱はその後も続き夜間37.5~38.5℃まで上昇するようになったため、6月6日当科を紹介受診した。【所見】(バイタル)体温36.6℃, 血圧113/55mmHg, 脈拍86/min整, SpO2 99%(room air)(身体診察)左の頚部リンパ節を1つ触れるのみで甲状腺の腫大や圧痛を認めず(血液検査)WBC 6200 /μL, RBC 448×104/μL, Hb 13.4 g/dL, Plt 22×104/μL, ESR 100 mm/h, Alb 3.5 g/dL, AST 11 U/L, ALT 9 U/L, BUN 12.9 mg/dL, Cre 1.11 mg/dL, Na 137.8 mmol/L, K 4.7 mmol/L, TC 129 mg/dL, LDH 136 U/L, Glu 105 mg/dL, HbA1c 6.0 %, CRP 7.35 mg/dL, TSH 0.027 μIU/mL, FT3 4.0 pg/mL, FT4 1.7 ng/dL, BNP 123.9 pg/mL, TRAB_C <0.9, TGAB 17.2 IU/mL, TPOAB <3.0 IU/mL, TSAB 91 %(体幹部造影CT)明らかな感染巣なし(頭部MRI)病的所見なし(甲状腺エコー)両葉ともに腫大傾向で、実質性状は低エコー域を伴い不均質【経過】当科ではアセトアミノフェン処方の上経過観察とし、初診時採血で認めた甲状腺機能亢進に対し内分泌代謝内科にコンサルテーションした。その後も症状遷延したため受診36 日後からPSL10mg/日内服を開始した。1週間後の再診時、症状はほぼ消失し炎症反応も著明に改善していた。1週間後にPSL5mg/日に減量し3週間継続した。PSL中止後もCRP陰性のまま症状再燃なく経過した。【考察】発熱をきたす疾患としては感染症、自己免疫疾患、悪性腫瘍が主であり、その他に薬剤性や内分泌疾患等が挙げられる。不明熱の原因が甲状腺疾患であることは非常に稀である。本症例の主訴は発熱と咽頭痛であり、前頚部痛や甲状腺の腫大・圧痛は認めなかった。炎症反応高値と甲状腺機能亢進、および抗TG抗体弱陽性から橋本病急性増悪と亜急性甲状腺炎が鑑別に挙がり、最終的に後者と診断された。【結語】不明熱の患者診療では甲状腺局所の症状に乏しくても亜急性甲状腺炎等を念頭に甲状腺機能検査を考慮する必要がある。

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