総合診療は診療看護師が生かされ輝ける場所
米国のNurse practitionerをモデルとした日本での診療看護師(NP)教育が始まり13年の月日が経った。当初は数十名しかいなかったNPであったが、今では約670名のNPが様々な領域で活動している。外科・内科の専門領域から麻酔科、救急外来、集中治療科、そして在宅医療と役割は多岐に及ぶ。今、私は総合診療科に属してチームの中でNPとして活動している。元々はNPとなる動機を与えてくれた脳神経外科に属していたが、自身の転機はNPになってから4年目にやってきた。所属する地域医療振興協会の特性から、青森県の六ケ所村にある診療所で働く機会を頂いた。以後、地域、僻地に従事するNPとして協会内外の17カ所の施設で働いたが、そこで必要とされていたのは、ある診療科に特化した専門的な深い知識・技術ではなく、人を全人的に診ることができる、幅広い知識と技術であった。疾患の治療やケアだけでなく、心身の健康、生活や家族まで多角的に人をみていく楽しさを知った。ここでは看護師として培った人そのものをみる力が生かされたと思う。疾患とともにその人が望む暮らしを送れるように、全ての医療スタッフが一丸となって協力していく。その守備範囲の広さがまさに総合診療の面白さだと思う。
米国のNPは11の専門分野に分かれているが、最も人気があるのはFamily NPであり全体の70%になる。日本の総合診療科が網羅する内容に近く、米国の医療においてなくてはならない存在となっている、おそらく、看護師として人を全人的に看る力に加えて幅広い医学的知識を要求されるFamily NPは看護師としての経験値も活かすことのできる魅力的な領域なのだろう。私達も2021年からGIM-NPの育成プログラムを開始した。総合内科の研修をベースに救急外来、透析室、感染症科、集中治療科での研修を終え、幅広いNeedに柔軟に対応できる人材を育成している。今後は耳鼻科、皮膚科、整形外科そして小児科なども研修に取り入れる予定だ。
今回、医学的視点と看護の視点を持つ私たちが出来る総合診療役割とは何かを述べていきたい。