診療看護師(NP)の養成課程とその配置に向けたエビデンス構築
1960年代米国におけるナース・プラクティショナーの普及を皮切りに、現在、世界各国では高度実践看護師が導入され、患者のケアへのアクセスや質の向上、医療費削減、看護師の役割拡大に寄与している。一方、わが国では2008年に大分で診療看護師(NP)の養成教育が始まった。診療看護師とは、日本NP教育大学院協議会が認めるNP教育課程を修了し、日本NP教育大学院協議会が実施するNP資格認定試験に合格した者で、患者のQOL向上のために医師や多職種と連携・協働し、倫理的かつ科学的根拠に基づき一定レベルの診療を行うことができる看護師と定義されている。
診療看護師が輩出されて10年以上が経過し、現在、診療看護師養成課程を設置する大学院は13校で、そのうちクリティカル領域を設置しているのは3校、プライマリ・ケア領域は4校、両領域を設置するのは6校である。資格認定に加えて2020年度から資格更新が行われており、2022年現在、670名が診療看護師(NP)として日本NP教育大学院協議会によって資格認定されている。領域の内訳は、クリティカル領域が515名、プライマリ・ケア領域が155名(成人・老年148名、小児7名)となっている。
東京医療保健大学大学院では、2010年より全国141病院からなるネットワークを有する独立行政法人国立病院機構(NHO)と提携し、豊富な診療現場・人材の提供のもと、高度な専門的看護実践能力を持ちチーム医療を推進できるクリティカル領域の診療看護師(NP)の養成に取り組んできた。これまでに200名以上の修了生を輩出し、構築してきたカリキュラムや取り組み、およびNP修了生が積み上げてきたエビデンスを紹介させて頂く。
そして、厚生労働省の特定行為研修にかかる看護師の研修制度、および米国等の「ナース・プラクティショナー」を参考にしたNP教育の課程認定を行っている日本看護系大学協議会と日本NP教育大学院協議会、ナース・プラクティショナー(仮称)制度創設をめざす日本看護協会の動向について概観し情報提供としたい。