[O-005] COVID-19流行時の急変対応時における空気感染対策の必要性:院内クラスター事例の検討
【背景・目的】
当院でCOVID-19クラスターが発生し、疫学調査の結果、急変3日前のSARS-CoV-2抗原検査が陰性であった患者の急変対応が、感染拡大の要因と考えられる事例を経験した。急変時の空気感染対策の重要性を強調する目的で報告する。【方法】職員の聞き取り調査と診療録調査を行い、感染拡大の要因を後方視的に検討した。
【結果】
X月Y日に病棟看護助手が抗原検査陽性となり、当該病棟の職員及び入院患者に抗原検査を一斉に実施したところ、同日に別の看護助手と患者Aが陽性となった。さらに、Y+1日に6名、Y+2日に6名が発症した。そのうち5名はY―1日に患者Bの急変に対応しており、AとBは同室であった。BはY―4日に抗原検査が陰性であり、急変時に大量のエアロゾル産生処置である非侵襲的陽圧換気療法が施行されたが、対応した医療者はN95マスクではなく、不織布マスクを着用していた。Bはその後個室に移され同療法を継続されたが、Y日に死亡した。またY+2日に発症した看護師Cは、急変時もそれ以前もBへの接触はなかった。しかし、病室の換気が不十分なまま、N95マスクを着用せずにBの死後処置を行っていた。感染源としてBが疑われたが、既に死亡退院していたため、呼吸器回路のマスクから検体を採取しPCR検査を施行した結果、陽性であった。
【考察】
急変時、N95マスクを着用せず大量のエアロゾル産生処置を行ったため、クラスターが発生したと思われる。Bは急変3日前に抗原検査陰性であったが、感染拡大の原因となったと推定されたことから、検査結果に関わらず、急変時は空気感染対策が必要と考える。また、空気感染対策せずに施行した死後処置で看護師が感染した可能性があったため、大量のエアロゾル産生処置を行った場合は、死亡直後の空気感染対策も必要であると考える。
【結語】
COVID-19流行時は、直前の抗原検査が陰性でも、急変対応時に全例N95マスクを着用し、空気感染対策を行うべきである