[O-008] 新型コロナウイルス後遺症に合併する体位性頻脈症候群の治療経過について
【背景・目的】
新型コロナウイルス感染症後遺症はいまだにその要因、治療法は確立されていない。当院後遺症専門外来では、倦怠感のある患者に体位性頻脈症候群(POTS)の有無を評価しており、その特徴について調査した。【方法】2021年1月18日から同年5月30日に専門外来を受診した倦怠感があり、かつPOTSの診断基準を満たした者を対象とし、同年10月30日までの経過を評価した。性別、年齢、喫煙歴、急性期肺炎の有無、発症から受診までの期間、専門外来受診までの医療機関数、治療内容、治療開始後の症状改善の有無、通院期間、来院時と観察終了時の就業状態、ΔHR、慢性疲労症候群の程度を示すPSについて調査した。【結果】498名中、倦怠感のある患者は252名(51%)であり、そのうち37名(15%)がPOTS診断基準を満たした。転勤で継続評価が不可能であった2名を除く35名を調査した。男18名(51%)、女17名(49%)、年齢中央値28歳、喫煙者1名、急性期肺炎3名(9%)、来院から受診までは93日、31名に精神的症状の訴えがあった。経過観察期間は164日で、全例にPOTSに対する生活指導、βブロッカー投与を行い、治療開始1か月後までに21名(57%)が効果を自覚し、半年後には25名(71%)で感染前の状況近くまで症状が改善した。また、来院時と経過観察終了時の変化はΔHR37→17、PS4→1、就業状況は継続・内容変更で継続21名→28名、休職・退職13名→7名であった。精神科診療を必要とした15名中6名にSSRIが使用された。【考察】一般にPOTSは2年経過後も症状改善が乏しいのに対し、後遺症に合併するPOTSでは、治療介入後、半年程度で感染前の状況まで症状が改善した患者が多く、比較的早期の診断と治療介入が症状を早期に改善させた可能性がある。
【結語】新型コロナウイルス感染症後遺症で倦怠感を訴える際、起立試験でPOTSの評価を行うことが重要である。