[O-006] COVID-19罹患後にME/CFSに移行する症例の臨床的特徴:血清ferritinと内分泌系に注目した検討
【背景・目的】COVID-19変異株流行と感染者数増加を背景に、慢性期症状(long COVID)の患者も増えている。long COVIDは多彩な症状を呈するため総合診療部門で対応することも多いが、特に最多症状である倦怠感は定性・定量化が困難であり、診療に技術を要する。また、重症度は症例ごとに異なり、同じ倦怠感であっても数か月で軽快する例から、ときに筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の診断に至る例まで存在するため予後予測が難しい。long COVID患者の中で、倦怠感が遷延しME/CFSに移行する症例の臨床的特徴を明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】2021年2月から2022年5月までに当院総合内科・総合診療科の外来を受診したlong COVID患者のうち、COVID-19発症から6か月以上経過した患者を対象として後方視的検討を行った。
【結果】対象となった234名のうち139名が倦怠感を有し、うち50名がME/CFSの基準を満たし(ME/CFS群)、89名は基準外(非ME/CFS群)、他95名は倦怠感以外の症状を有した(非疲労群)。倦怠感評価スケール(FAS)やEuro QOL(EQ)ではME/CFS群で有意に障害されていた。血液・生化学的指標の網羅的な検討では、単独で血清ferritin値が他2群に比してME/CFS群で有意に高値であり(中央値:86.7 vs 98.2 vs 193.0 μg/mL)、FASやEQとの相関を認め、特に女性ではME/CFSを特徴付ける指標であった。加えて内分泌学的にはIGF-I値との間に負の相関を認めた。
【考察・結語】ferritinは急性期COVID-19の病勢を表す指標として知られるが、long COVIDでも症状や重症度、予後と関連しうることを本研究は明らかにした。本来、特に女性ではferritin低値が倦怠感と関連しやすいといわれるが、本研究は逆の結果であり、鉄代謝指標や他の炎症系マーカーとは関連がなかったことも踏まえると、単に急性期の影響の遷延だけではなく、内分泌系などを介した慢性期特有の病態の潜在も示唆している。詳細な病態の評価や臨床応用に向けたlong COVIDの予後予測因子としての血清ferritinの妥当性について更なる検討が必要である。