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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[O-009] 薬剤性パーキンソニズムとの鑑別に苦慮した上気道閉塞を伴ったパーキンソン病の一例


【背景】パーキンソン病(PD)において,上気道閉塞を来した症例は稀だが報告がある.薬剤性パーキンソニズムとの鑑別に苦慮した一例を報告する.
【症例】63歳,男性
【主訴】意識障害,体動困難
【病歴】抗精神病薬を常用する独居の統合失調症患者.6ヶ月前にCOVID-19罹患後、長期入院に伴う廃用と考えられるADL低下のため,訪問診療を導入されていたが,自宅で意識障害となり,救急搬送後,挿管管理され,同日当科入院した.
【所見】頭頸部後屈,仮面様顔貌,舌ジストニア,右優位の四肢の安静時振戦,四肢の筋強剛,寡動
【経過】第1病日に抜管したが,第4病日に再び酸素化低下を認め,再挿管した.プロポフォールの投与で気道閉塞が改善するため,喉頭痙攣による上気道閉塞を疑った.てんかんや多系統萎縮症などを鑑別に挙げたが, MRIや脳波に異常なく,病歴から薬剤性パーキンソニズムと考え,抗精神病薬を漸減した.長期の挿管管理を要し,第20病日に気管切開術を施行した.ファイバースコープで両側反回神経麻痺を示唆する所見を認めた.第35病日にDaT Scanを実施したところ,線条体における左右差を伴う集積低下を認め,PDの診断に至った.第47病日のドパミンチャレンジテストで反応性良好と判断し,翌日よりL-dopaによる治療を開始したところ,錐体外路症状と喀痰貯留は改善傾向に転じた.階段昇降可能なADLまで改善し,第78病日で療養病院に転院した.
【考察】薬剤性パーキンソニズムは,原因薬剤投与開始後,1年以内にパーキンソニズムを示した場合に特に考慮すべきであるが,本症例では長期の抗精神病薬投与歴があり, 直ちに薬剤性とは断定しがたい.DaT scanやMIBGシンチグラフィーはPDと薬剤性パーキンソニズムとの鑑別に有用で,神経診察だけでは両者の鑑別が困難な患者の診断に有用であると考える.
【結語】パーキンソニズムを伴う上気道閉塞にはPDも鑑別に挙げ,積極的に核医学検査を検討すべきである.

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