[O-010] カフェインの慢性過剰摂取により生じた繰り返す低カリウム血症性ミオパチー
【背景】カフェインは中毒量でなくても連用により低カリウム血症を生じうる.【症例】53歳,男性.役場職員による生活見守りを受けている.【主訴】脱力【既往歴】高血圧、低カリウム血症(過去に入院歴あり)、躁うつ病。物事に対する融通が利かず、発達障害も疑われている。【現病歴】X-1年12月、下肢脱力で受診し、低カリウム血症性ミオパチーの診断で入院した.エナジードリンクとコーラ(カフェイン換算260mg/日)の常飲と尿中K/Creの低下があった。カフェインによるカリウム低下を疑うも負荷試験は同意が得られず、上記2種類の飲料を控えるよう説明し退院したがX年7月に低カリウム血症性ミオパチーの再発で入院した。偏食や嘔吐・下痢はなく、市販薬を含め薬剤使用はなかった。【身体所見】両下肢の筋力低下以外に異常なし【検査結果】血中K 2.4mEq/L,尿中K 10mEq/L(正常下限35 mEq/L).尿中K/Cre 7.5 mEq/g・Cre, TTKG 2.13.血中Mg、血液pH、各種内分泌機能に異常無し.心電図:平低T波.【経過】前回退院以後は上記2種の飲料を控えていたが、丁寧な問診の結果、緑茶とコーヒーの連日多量摂取(カフェイン換算500mg/日)が判明した。5日間のカリウム製剤の内服を要したが,カフェイン制限によりカリウム値、下肢筋力とも速やかに回復した.カフェインの離脱症状は生じなかった。カフェイン含有飲料の例を挙げながら改めて本人に説明し、役場職員とも情報を共有し多面的な支援体制を構築した.【考察】非腎性喪失による低カリウム血症の診断は問診が重要である。偶然に生じたカフェイン再摂取の病歴が診断に結びついた。しかしコミュニケーションに関するDiagnostic errorのため再発を予防できなかった点は本症例の反省点である。今回の入院においては、こだわりの強さによる特定飲料の多量摂取の可能性や精神疾患患者のカフェイン嗜好性に配慮しつつ、患者特性に合わせた説明を行うことでdiagnostic excellenceの達成を目指した。【結語】カフェインの慢性過量摂取による繰り返す低カリウム血症を経験した.患者背景を意識した問診と、患者特性に合わせた説明を行うことが重要である。