[O-015] 夜間の胸部不快感と頻尿を主訴に受診したRestless chest/bladder syndromeの1例
【症例】78歳 男性
【主訴】夜間の息苦しさ、動悸、胸痛、頻尿、不眠
【現病歴】3年半前より毎晩4回ほど息苦しさ、動悸、胸痛を伴う尿意で中途覚醒するようになった。少量排尿後に臥位のまま深呼吸を繰り返すことで胸部症状が改善し、10分程度で再入眠できる。排尿困難や頻尿を含めて日中に症状はない。循環器内科や泌尿器科など複数診療科で精査されたが原因不明であり当科を受診した。
【既往歴】前立腺肥大症(経尿道的レーザー前立腺核出術後)、原発性アルドステロン症、陳旧性脳梗塞、痔核手術後、右下肢静脈瘤手術後、膵嚢胞、突発性難聴
【内服】スボレキサント、ロフラゼプ酸エチル、ランソプラゾール、ビベグロン、ジアスターゼ配合剤、シルニジピン、トピロキソスタット、インダパミド、エサキセレノン製剤、ロスバスタチンカルシウム
【家族歴】父:肺癌
【社会生活歴】特記事項なし
【身体診察】神経診察を含めて明らかな異常を認めない
【検査結果】一般血液・生化学検査:フェリチン27.7ng/mL。他に異常所見なし。
【経過】いずれも睡眠中にのみ生じる症状であり、深呼吸と排尿という有症部位の運動により症状が改善していることから、Restless legs syndrome (RLS)の亜型を疑った。プラミペキソール塩酸塩水和物を開始したところ、48時間以内に症状の改善を認めた。尚、クエン酸第一鉄による鉄補充だけでは改善しなかった。
【考察】本症例の睡眠中の息苦しさなどからは心不全を想起したが、起座呼吸ではなく、また日中の労作時は無症状であった。夜間頻尿も高齢男性に多い訴えではあるが、本症例は前立腺肥大術後以来、日中の排尿障害は消失している。また中途覚醒時の排尿量はごく僅かであることから、アルドステロン症を含めた多尿・蓄尿による尿意ではなく、排尿行為自体が寛解因子となっていると考えた。
【結語】睡眠障害を伴う夜間中心の症状で、有症部位の運動により軽快するという特徴的な病歴から、RLS亜型を診断することが可能である。