[O-011] 続発性偽性低アルドステロン症を呈した複雑性尿路感染症の乳児例
【背景】乳児期に電解質異常を呈する疾患は多岐にわたる.今回,尿路感染症(UTI)の再発時に低Na血症を認め,続発性偽性低アルドステロン症(s-PHA)を呈した先天性腎尿路異常(CAKUT)の乳児例を経験したので報告する.
【症例】月齢4の男児
【主訴】発熱,咳嗽,鼻汁
【病歴】月齢1で大腸菌によるUTIに罹患し,他院で加療された.両側水腎症(左grade 4,右grade 1)を認め,抗菌薬の予防投与が開始されていた.入院前日から機嫌が悪く,発熱,咳嗽,鼻汁を認めた.翌日も発熱を認め,前医で尿中白血球反応陽性,血液検査で炎症反応を認め,当院に紹介された。
【所見】身長63.2 cm,体重6925 g,体温37.0℃,心拍数159/分,呼吸回数28/分,血圧96/52 mmHg,顔色良好、活気あり,大泉門 平坦・軟,呼吸音 清,心音 整,腹部 平坦・軟,四肢 末梢冷感なし,浮腫なし,皮疹なし,包茎あり [血液] 白血球20090/µL,CRP 3.51 mg/dL,Na 125 mEq/mL,K 5.8 mEq/mL,レニン≧45 ng/mL/h,アルドステロン14589.4 pg/mL [尿一般] 潜血(+),白血球反応(3+)[カテーテル尿培養] セラチア菌 10^6 CFU/mL [腎臓超音波] 左水腎症grade 1
【経過】セラチア菌によるUTIに対して,輸液療法とセフタジジムによる抗菌薬加療を開始した.それらにより,電解質異常は改善し,レニン,アルドステロンもそれぞれ2.1 ng/mL/h,86.3 pg/mLまで低下した.
【考察】s-PHAは低Na血症以外に高K血症を来し,程度によっては生命に危険が及ぶため,電解質管理を要する.s-PHAを呈したUTI症例の原因菌は大腸菌が最多と報告されているが,本症例ではセラチア菌が検出され,典型的ではなかった.s-PHAの発症には一般的にCAKUTとUTIのいずれかまたは双方が関与し,尿細管の未成熟な月齢6未満の乳児に多い.本症例はUTIの再発を契機にs-PHAを発症したため,CAKUTよりも尿細管へのUTIによる炎症の波及がアルドステロン不応を惹起した可能性が高い.
【結語】CAKUTやUTIを伴う乳児に著明な低Na血症を認める場合には,続発性偽性低アルドステロン症の合併に注意が必要である.