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2月18日 (土)

プログラム

抄録





"薬剤名"+"症候"で薬物中毒を逆転一発診断



【戦略名】"薬剤名"+"症候"で薬物中毒を逆転一発診断【背景となる理論、または着想など】
臨床医が疾患名を聞いたことがないような症例にどうやって自力で診断に辿り着くか自分の経験をもとに考えてみました。特に薬物中毒や薬剤の副作用を疑うべき疾患で、この戦略が有用なのではないかと考えています。
"薬剤名"+"症候"で、Pubmedで検索し、その薬剤に関連し、その症候を起こすような症例報告がないか検索します。ただし薬剤の商品名だけでは検索しても報告がでてこない場合があるため、薬剤の一般名や種類を入力してみることも大切です。
【利用できる具体的なケース】
60歳男性、30日間続く37度前半の微熱を主訴に来院されました。微熱以外の自覚症状として、頭痛、口腔内の異常感覚、発汗過多、手指の振戦を認めました。項部硬直やリンパ節腫脹は認めませんでした。血液検査では白血球やCRPは正常範囲内で、他に明らかな異常値を認めませんでした。生活歴について問診すると、患者はシロアリ駆除の仕事をしていました。シロアリ駆除に使用する殺虫剤の名前は、チアメトキサム(ネオニコチノイド系殺虫剤)でした。
チアメトキサムをPubmedで検索しても、人間の症例報告には辿りつきませんでしたが、"neonicotinoid", "fever","headache"と検索すると、日本人が執筆したネオニコチノイド系殺虫剤の症例報告が見つかりました。そして、「ネオニコチノイド中毒」という病名があることを私は初めて認識することができ、他のネオニコチノイド中毒の国内外の症例報告に容易に辿り着くことができました。ほとんどの症例は殺虫剤の誤飲の症例報告ばかりでした。毒物学者と協力し、本症例では血液検査や尿検査で高濃度のチアメトキサムが検出され、チアメトキサムの使用を中止後、全ての症状が消失したことを確認することができ、慢性的な職業暴露によるチアメトキサム中毒であったことが証明されました。
本症例は殺虫剤中毒の珍しい一例でしたが、この戦略は薬剤の珍しい副作用の症例にも応用できるのではないかと考えています。

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