AI診断を使いこなす:若手から指導医の診断・教育ツールとしての使い方
【背景となる理論、または着想など】診断の8割は問診であり、診断には直感的診断であるシステム1、文献等の情報を集めながら各鑑別疾患を吟味するシステム2、患者に直接今までの経験や思い当たる疾患がないか解釈モデルを利用したシステム3がある。学生・若手医師は指導医と比較し経験数が少ないためシステム2やシステム3を利用することがほとんどである。カンファレンスや指導医がいればでシステム1についての意見を求めることはできるが、実際の市中病院や家庭医の現場では単独で外来等をこなすことが多く全てのケースを一つ一つ指導医に聞くことは不可能である。総合診療科といえど、マイナー科等の珍しい疾患についてはベテランですら全ての診断を網羅できるわけではない。現在AI診断のアプリケーションが各企業で作成されており、AI診断アプリを使いこなすことは診断だけでなく若手の教育も含めて、どの学年・立場の医師にとっても非常に有効だと考えている。具体的なケースを以下に述べる。【具体的なケース】<ID>43歳女性<主訴>下腹部痛(正中)37.2度。徐々に痛くなり、NRS 5/10であり我慢はできるが気になったのできた。 問診が診断の8割を占めるとの報告はあるが、上記主訴で学生から指導医までの鑑別疾患数はバラバラであることが予想される。ユビーというAIアプリに入れると機能性月経困難症、骨盤内炎症症候群、陣痛など10種類の鑑別疾患が挙がった。それに加えアニサキス腸炎や排卵痛などさらに鑑別は挙げることはが、AI診断を使用することで一般的な疾患の見逃しが減り、外来での文献確認のための時間の削減や指導医への質問の質が向上するほか指導医側も負担が減る。指導側もAI診断も含めた若手医師の鑑別疾患を見ながら「この疾患が足りない」と指摘することも可能である。課題は現在のアプリケーションでは稀な疾患まで網羅されていないことである。それらがカバーされれば日本病院総合診療医学会のベテランの先生方のような思考回路がアプリを通して学べる時代が来るかもしれない。