希少疾病に対する診断オデッセイプロットの応用
【戦略名】診断オデッセイプロット
【背景となる理論・または着想など】[背景]希少疾病は発症から診断までに長い時間がかかり、経過で誤診されることが多く、臨床医に疾病のゲシュタルトが育てにくい。希少疾病の診断プロセスを共有し早期診断に結びつけるための手法は限られている。演者は日本最大の小児専門病院で多彩な診断困難例の診断に取り組んでいる。500種類を優に超える希少疾病の患者を診断する中で、①発症〜医療機関受診〜誤診〜正診までの速度感と、②患者に経過で下される誤診の傾向、を把握することが希少疾病のゲシュタルトを育むことに気づいた。演者はそのための新たな手法として診断オデッセイプロットを開発し、小児急性散在性脳脊髄炎でその有用性を報告した(Sci Rep, 2021; 11: 21954.)。本発表ではプロットの作成法、その解釈、および応用を考察する。
【利用できる具体的な状況】[対象]臨床医にゲシュタルトが育まれていない疾病。慢性疾患でも急性疾患でも可能。[方法]対象とする疾病のコホートで、発症(To)、医療機関受診(Tv)、最終診断に先行する誤診(T1,T2,…Tx)、および最終的な正診(Td)を受けた時間を集積する。患者ごとのToからTdまでをカラーコードし原図とする。原図を並べ替え、ToからTdが短い順(A)、ToからTvが短い順(B)、TvからTdが短い順(C)にプロットを作成し、診断プロセスを視察する。[解釈]Aで疾病の異質性を、Bで誤診の種類と誤診期間を、BとCいずれがAに相関するかで診断の遅れが患者側の要因か医療側の要因かを、検討する。[応用]超希少疾病では患者家族会と協働することで知見が集約できる。コモンディジーズでプロットを作成すれば医学生・研修医教育に有用である。革新的な診断技術が生まれた場合、前後で年代を分けて作図すれば診断に与えた効果を可視化・定量化でき、Quality improvement研究に通じる。誤診の種類と誤診期間の定量情報は人工知能を用いた診断推測アルゴリズムがコモンディジーズしか提示しない現状の改善に役立つ可能性がある。