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2月18日 (土)

プログラム

抄録





違和感活用術-メタ認知を活用して違和感の効率的言語化を目指す-


【背景となる理論・または着想など】推論の過程で直感的に診断仮説を想起できたとしても、「説明できない矛盾がある、もしくは何かがおかしい」という感覚を覚える場面に遭遇することがある。その際、違和感を上手く言語化することができれば、有用な対立仮説の想起につながり、洞察問題解決が促進される可能性がある。洞察問題解決とは、メタ認知を働かせた言語化を行うことで、とらわれていた前提・制約から解放され、問題の再解釈・再体制化を行い解決を導くことである。一般的に、想起した自身の仮説と目の前の症例を比較して合わない点がある場合に違和感を覚えるので、合わない点を考察することが重要である。しかしそれぞれの情報を一つ一つ比較するだけでは、メタ認知に上手くつながらず、効率的な違和感の言語化につながらないことも多い。そのため着目すべきポイントを定めて検討することでメタ認知を利用し、違和感の早期効率的言語化を促す方途が本戦略である。
【利用できる具体的な状況】既往のない20代女性。数日前に発熱が出現し、その後自動車で外出するも交通外傷にあい他院受診となった。有意な外傷なく帰宅したが、発熱が継続するため当院受診となった。受傷後より右頸部痛が出現した。やや消耗している印象で、右頸部に圧痛を認めるのみで、血液検査・尿検査・胸-骨盤部CT検査では有意な所見は認めなかった。何らかのウイルス感染症と交通事故後の右頸部痛という仮説を直感的に想起したが、その仮説に違和感を覚えた。消耗している点に違和感を覚えたが、そこから有用な対立仮説は想起できなかった。そこで合わない点を、本戦略を用いて検討した。それにより右頸部の圧痛が想定より強いことを認識し、発熱も考慮しレミエール症候群や頸部膿瘍を想起した。その後、造影CTで右頸部膿瘍を認めた。本戦略により、違和感の効率的言語化が促進される可能性があるが、利用方途によっては違和感を覚えることさえ難しい初学者の直感力向上といった教育的利用も可能と考える。



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