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2月18日 (土)

プログラム

抄録





無症候性の脳出血を経験した一例


【背景】通常、脳出血は頭痛や麻痺などの神経所見を呈するが、無症候性の脳出血も有り得る

【症例】67歳男性
【主訴】背部痛、呼吸苦
【既往歴】アルコール依存症、肝硬変(Child-Pugh 8点)
【現病歴】
アルコール依存症により、2年前から外出時の転倒により救急搬送されることが多々あった。体動困難を主訴に来院9日前まで当院消化器内科で入院していた。来院前日より左背部痛、呼吸苦が出現し、自宅で2回嘔吐した。症状が軽快しないため救急要請した。
【身体所見】
GCS 15、見当識障害なし、呼吸数 24、脈拍数 131 整、血圧 140/97、SpO2 95%(RA)、体温 37.9℃
眼球黄染あり、左肺野fine cracklesあり、左背部圧痛無し、神経診察異常なし、手指振戦あり
【検査結果】
アルブミン 3.7 g/dL、総ビリルビン 2.5 mg/dL、PT-INR 1.26、フィブリノーゲン 148 mg/dl、Dダイマー 43.8 μg/mL、FDP(血液) 55.0 μg/mL
胸部CT:左下葉S6背側に不均一な濃度上昇あり
腹部CT:少量腹水あり
【経過】
肺炎として診断し、抗菌薬治療を開始していたが、入院後に歩行にふらつきあり、アルコール依存もあることからウェルニッケ脳症除外目的にMRIを撮影したところ、低信号域が見られた。頭部CTでは、右側頭葉に高吸収域と周囲に低吸収域を認めた。
【考察】
CT所見では高吸収域の周囲に低吸収域が存在し、脳梗塞後の出血が疑われる。血管内処置後に無症候性脳出血を発症することは稀ではないが、今回は非代償性肝硬変のあるアルコール依存症患者で発症した。肝硬変やアルコール依存症患者は脳出血を発症するリスクが高く、明確な神経症状がなくとも脳出血を発症する可能性がある。
【結語】
血管内治療後の無症候性脳出血症例は散見されるが、非代償性肝硬変を伴うアルコール依存症患者では明確な神経症状がなくとも脳出血の可能性がある。
















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