医学科低学年、コメディカル学生が臨床推論に入門するための総合戦略~Paradoxical Diagnostic Exploring
【背景となる理論、または着想など】
琉球大学救急・災害医療、総合診療サークルOff the Clock(以下OtC)では、学生主導で臨床推論ケースカンファレンスを開催している。部員の半数以上を占める医学科1~3年生から高学年や研修医向けの臨床推論のケースカンファレンスに参加して勉強したいという声も多い。そこで、4~6年生の思考プロセスやカンファレンスのファシリテーター、プレゼンターを務めた際に気が付いた課題を洗い出し、低学年に多いバイアスを捉えた。それらのバイアスを克服でき、低学年にも覚えやすく使いやすい鑑別診断を列挙する方法を考案した。多くの低学年学生は画一的な思考にとらわれるきらいがある。鑑別診断を列挙する際にも他の学生と異なる視点が持ちづらく、被りがちである。そこで考案したのが逆説的診断探索Paradoxical Diagnostic Exploring(以下PDE)である。PDEでは「Aを考えたらA‘を見よ(AとA’には対義語が入る)」というシンプルな原則のもと対義語の性質ごとにⅠ~Ⅴの総合診断戦略を提示する。【利用できる具体的なケース】
低学年向け臨床推論のケースカンファレンスにて。
プレゼンター「60歳、女性の関節痛です。鑑別診断を考えてみましょう。」
学生1「変形性関節症を考えます。」
学生2「化膿性関節炎はいかがでしょうか。」
学生3「脱臼、骨折といった外傷はいかがでしょうか。」
このように、局所の疾患に注目すると、そればかり挙げがちである。
プレゼンター「ありがとうございます。皆さん局所の疾患はよく上げられましたね。局所の反対は全身ですね。何か全身疾患で関節が痛くなる疾患を挙げられる方はいますか。」
学生2「関節リウマチやSLEなどの膠原病はいかかですか。」
プレゼンター「素晴らしいですね。ほかにはありますか。」
学生3「年齢が合わないかもしれませんが、血友病も関節内出血で痛みがあります。」
プレゼンター「よく思いつきましたね。その通りです。」
以下、疾患の病態について補足があり、ケースカンファレンスが進行していく。