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2月18日 (土)

プログラム

抄録





Nested Framework Strategy (NF Strategy)


【背景となる理論、または着想など】
演者らは分析的プロセス(システム2)の一種であり、システム2の欠点である迅速性を克服しうる診断戦略としてフレーム法を提唱した。
フレーム法で大まかなフレームワークを絞ることが可能であったが、更にそのフレームワークの中で「入れ子」として上位のフレームワークに紐づいた下位のフレームワークを構築することで診断困難症例に有効な臨床推論が可能になった。
我々はこの「入れ子」状のフレームワークを用いた診断戦略をNested Framework Strategy(NF Strategy)と名付けた
【利用できる具体的なケース】
83歳女性が繰り返す失神で来院した。過去のHolter心電図では明らかな不整脈は認めなかった。失神は前駆症状を認めず、起立時ではなく前傾姿勢で誘発された。失神時の血圧低下、頭痛および神経学的巣症状は認めなかった。心電図では2束ブロックを認めた。胸部造影CT検査では巨大食道裂孔ヘルニアを認めたが、肺塞栓や大動脈解離は認めなかった。失神のフレームワークとして心血管性、起立性低血圧、脳血管性、迷走神経反射を想起した。前駆症状がない点、起立時での血圧低下がない点、頭痛および神経学的巣症状を認めない点より心血管性の失神を第一に考えた。しかし心血管性の失神の中で更に鑑別を絞る必要があった。本症例では心血管性のフレームワークの「入れ子」として、不整脈、心拍出量の減少、血管の問題の3つの下位フレームワークを想起した。
胸背部痛や心電図変化、トロポニンの上昇は認めず、胸部造影CT所見も正常であることから血管の問題は考えにくいと判断した。前傾姿勢で失神する点から巨大食道裂孔ヘルニアによる左房の圧迫が心拍出量低下を引き起こしている可能性を考え、前傾姿勢で心エコーを行ったところヘルニアによる左房の圧迫を証明した。よって心拍出量の減少のフレームワークを第一に考えた。ただし心電図で2束ブロックを認めることから不整脈のフレームワークも否定しきれないことより食道裂孔ヘルニア根治術の効果判定を行うこととした。食道裂孔ヘルニア根治術施行後も失神を繰り返したことから、不整脈のフレームワークの可能性が高くなった。その後患者は完全房室ブロックによる失神で救急外来を再度受診して、ペースメーカーを留置したところ失神は消失した。以上より本症例は上位のフレームワークとして心血管性と判断した。その「入れ子」の下位のフレームワークとして心拍出量の減少および不整脈の2つを合併したと考えた。

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