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2月18日 (土)

プログラム

抄録





救急、院内急変における急性高二酸化炭素性呼吸不全の診断上のピットフォール


急性高二酸化炭素性呼吸不全は呼吸中枢、脊髄、末梢神経、神経筋接合部、呼吸筋、胸郭、肺実質などの異常に起因するもの、敗血症、ショックに伴うもの、などが原因として考えられる。臨床的に最も多いのはセッティングにもよるが、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪や呼吸中枢機能を低下させる薬物などが考えられ、診断に悩むことは少ない。神経筋疾患では典型的なものを除けば当初は診断が困難であっても当座は分時換気量を保つことでpHやPaCO2を保つことはできる。しかし、サイレントチェストを呈する喘息重責で、重症のため病歴聴取が不十分で重症呼吸性アシドーシスになって気管挿管されている場合は診断が困難である。なおかつ治療として呼吸数や分時換気量を上げればauto-PEEPが増悪し、ショックから心停止へ至ることもありうる。振り返ると喘息の病歴が取れることもしばしばあるが、急性期に目の前の患者が呼吸性アシドーシスとショックに陥っている状況下で診断、治療を即座に行うことは容易ではない。一つには人工呼吸器のグラフィックが利用可能であれば、気道内圧の上昇が、肺コンプライアンスの低下によるものか、気道抵抗の上昇によるものか、auto-PEEPが発生しているか、などを見ることが比較的容易にできる。しかし、このようなケースに遭遇する場面はモニタリング能力の整ったICUとは限らない。そのため、”換気量を上げたらショックになった”という病歴もヒントに喘息重責の診断および治療に移ることを提唱したい。ショックの原因としてauto-PEEPによる閉塞性ショック以外に、その他の閉塞性ショック、敗血症などの分布異常性ショック、心原性ショック、血管内容量減少性ショックなども評価しつつ、ステロイド全身投与、ベータ刺激薬による気管支拡張療法をためらわずに行うべきである。通常高二酸化炭素血症に用いる換気量増加という治療手段が病態を増悪させる喘息重責という病態は現在では比較的稀になっているが、短時間で致死的となりうるため、現場では有効な診断戦略と考える。

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