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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-002] 食道癌に続発した肢端紫藍症(したんしらんしょう)の一例 


緒言:肢端紫藍症は原発性と二次性があり、二次性は膠原病・がん・感染症・薬剤性・神経疾患・摂食障害・精神疾患で起こりうるとされている。症例:脳梗塞とそれによるてんかんの既往のある76歳男性が、初夏のある日1週間続く咽頭痛・咳・痰と1日前からの四肢末端の色調不良を訴え来院した。バイタルサインは体温37.1℃、血圧126/80mmHg、HR86、SpO2 99%であった。血液検査ではWBC12700、CRP11.08、LD2016を示した。咽頭発赤は認めず肺にラ音は認めなかった。四肢の末端部分がチアノーゼを呈していた。触診では温かかったので、微小塞栓症ではなく肢端紫藍症と診断した。咳・痰の原因検索のためCTを撮影したところ、食道壁の肥厚、両肺に広範に散布する粒状影と、多発する肝腫瘤を認めた。食道癌を疑い上部消化管内視鏡を施行したところ長さ9cmの半周性の隆起が頚部食道から胸部上部食道に認められ、病理診断は扁平上皮癌であった。末期食道癌と診断し、入院し緩和ケアを受けた。初診から29日目に永眠した。四肢末端の着色は経過中一貫して変わらなかった。考察・結語:肢端紫藍症は今もメカニズムは明確でなく、末端虚血やレイノー病と混同されがちである。肢端紫藍症は末梢性チアノーゼの一種であり、末梢細動脈の発作性の収縮と、それに続く皮下静脈叢の拡張によると考えられている。細動脈の収縮は限定的で、冷感を来すほどの収縮は起きないようだ。レイノー現象やdigital ischemiaとは区別されるべきである。悪性腫瘍に伴う肢端紫藍症の報告はいくつかあるが、食道癌では稀である。本疾患は色調変化以外特に症状に欠けるが、重大な全身疾患を示唆することがあるので軽視してはならない。

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