[P-008] 幼少期より継続する周期的な下腿痛の原因が家族性地中海熱(FMF)であることが判明した一例
【症例】19歳女性
【主訴】繰り返す下腿の筋肉痛
【既往歴】なし
【現病歴】小学生低学年の頃より一ヶ月に一度誘因無く下腿の筋肉痛が主に片側の腓腹筋に出現していた。疼痛出現時は痛みのため体動困難となるが、特に治療なしに翌日には疼痛は消失していた。当科受診の1ヶ月前にも同様の痛みの発生があったが1日の臥床で軽快しなかったため近医クリニックを受診した。原因不明として解熱鎮痛薬を処方され経過観察となった。疼痛は3日で消失したが、その一ヶ月後再度疼痛が出現したため当科受診となった。
【身体所見】身長152.7cm、体重43.0kg、体温36.0℃、血圧105/69mmHg、脈拍79/分、SpO2 100%(室内気)呼吸音清、心音整、雑音なし、両足背動脈は触れる、右腓腹筋の自発痛・圧痛があり、増悪因子・軽快因子なし、下腿痛と同時に腹痛が生じることもあった。患部の萎縮・肥大なし。【検査結果】白血球 5100/μL、赤血球 419万/μL、好酸球 1%、Hb 12.7g/dL、Ht 38.6%、MCV 92.2fL、血小板 24.9万/μL、D-Dダイマー 0.5μg/dL、TP 7.6g/dL、ALB 4.7g/dL、T-BIL 0.4mg/dL、AST 19U/L、ALT 12U/L、LD 187U/L、ALP 162U/L、γ-GTP 10U/L、BUN 9.1mg/dL、Cre 0.45mg/dL、Na 140mEq/L、CL 105mEq/L、K 3.8mEq/L、赤沈(60分)16mm、CRP 0.03mg/dL、CK 77U/L、ALD 3.8U/L、LDH 197U/L【経過】初診時の血液検査に異常を認めず、膠原病・血管炎等を考え抗核抗体やANCAを提出したが有意な所見は得られなかった。次回受診時に針筋電図を実施したが、こちらも有意な結果が得られなかった。その後も月一回疼痛発生時に来院していただき当院脳神経内科と相談しながら各種検査を実施した。封入体筋炎・極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症・ファブリー病などを念頭に画像検査・血液検査・遺伝子検査等を実施したが診断に結びつく検査結果は得られなかった。診断がつかないまま1年ほど経過し、他院神経内科に筋生検を依頼したところ、病歴からFMFを疑い診断的治療としてコルヒチン内服開始を提案された。早速コルヒチン内服を開始したところ、周期的な下腿痛および腹痛が完全に消失した。
【考察・結語】疼痛時の発熱もなく、血縁にある家族にFMF患者は存在せず、FMFとしては非典型であった。FMFは全国で500人程度の患者が存在すると報告されているが、実際は診断がつかず原因不明とされている症例が多い可能性がある。