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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-004] 高度蛋白尿・血尿および強い頭痛と頻回の嘔吐をきたしたSLEの1例


【症例】32歳、女性
【現病歴】SLEで外来加療中に強い頭痛、頻回の嘔吐を認めた。高度蛋白尿、血尿、高脂血症、下腿浮腫を認め、ネフローゼ症候群の診断で入院となった。
【現症・検査所見】体温 37.0℃、脈拍 90bpm、血圧 132/96mmHg、下腿浮腫著明、項部硬直なし、尿所見: 尿蛋白 4+, 尿潜血 3+, 血液検査所見: TP 4.6g/dL, ALB 0.9g/dL, CRE 0.60mg/dL, BUN 28mg/dL, TC 536mg/dL, TG 365mg/dL, LDLc 402mg/dL, WBC 13800/μL, HGB 13.8g/dL, PLT 48.5万/μL, IgG 505mg/dL, C3 113.0mg/dL, C4 21.9mg/dL, CH50 32U/mL, 抗dsDNA抗体 陰性, 抗Sm抗体 陰性, 抗リボソームP抗体 陰性, 髄液所見: 初圧 24cmH2O, 細胞数 3/μL, TP 16mg/dL, 糖 81mg/dL, IgG 2.1mg/dL, IL-6 55pg/mL
【経過】強い頭痛と頻回の嘔吐について当初NPSLEの発症を考えた。髄液IL-6は高値であったが、血球の減少や補体の低下は認めず、SLE関連の自己抗体がすべて陰性であり、IgG index 0.05と低値であったため、NPSLEは否定的と考えた。頭部MRIで上矢状静脈洞、横静脈洞、S状静脈洞に多発血栓症を認めた。抗リン脂質抗体はすべて陰性で、著明な低ALB血症による血管内脱水により血栓症を生じ、強い頭痛と頻回の嘔吐は多発脳静脈洞血栓症によるものと考えられた。適切な補液、ALB製剤およびヘパリンの投与により頭痛、嘔吐は消失した。一方ネフローゼ症候群について、当初ループス腎炎が鑑別に挙げられたが、腎生検ではループス腎炎を示唆する所見は得られなかった。光顕で異常を認めず、電顕では上皮下沈着、内皮下浮腫、内皮腫大、メサンギウム基質の増加を各々軽度のみ認め、足突起は所々で消失し、微絨毛の発達を認めた。免染ではIg、C3、C4各々±の沈着にとどまり、微小変化型原発性糸球体腎炎によるネフローゼ症候群(MCNS)と診断した。
【考察】ループス腎炎、NPSLEとの鑑別が必要であった、SLEに合併したMCNS、多発脳静脈洞血栓症の1例を経験した。本邦においてSLEとMCNSの合併の報告は複数あるが、多発脳静脈洞血栓症を合併した症例の報告はなく、貴重な症例であると考えられた。

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