[P-006] エスシタロプラムが奏功した持続性知覚性姿勢誘発めまいの2例
【背景】持続性知覚性姿勢誘発めまい(persistent postural-perceptual dizziness:PPPD)の2例を経験したので報告する.
【症例1】78歳 女性
主訴:浮動性めまい
病歴:巨細胞性動脈炎で当科にかかりつけ.X年10月から浮動性めまいがあり近医耳鼻咽喉科を受診したが,以後もめまいが持続するため,X+1年8月に当科で精査を行った.
所見:身長:152.5cm, 体重:55.4kg, 体温:36.5℃, 脈拍数:75回/分, 血圧:126/72mmHg.血液検査・頭部MRI検査・心電図検査も特記所見は無かった.
経過:約1年続く浮動性めまいで,起立時や歩行開始時・自宅で足元の木目を見た時に増悪した.めまいが増悪する時期に友人が入院し身体的・精神的ストレスがあった.PPPDと診断し,エスシタロプラム5mgの内服を開始し,めまいは消失した.
【症例2】75歳 女性
主訴:浮動性めまい
病歴:X-2年より,歩行時の浮動性めまいを自覚した.近医耳鼻咽喉科・脳神経外科を受診したが,めまいが持続するためX年3月に当科を紹介受診した.
所見:身長:158.7cm, 体重:54.4kg, 体温:36.3℃, 脈拍数:99回/分、血圧:149/88mmHg.血液検査・頭部MRI検査・心電図検査は,特記所見は無かった.
経過:浮動性めまいで立位や歩行開始時に増悪していた.めまい出現前に地域の自治会長の仕事を始めストレスがあった.PPPDと診断し,エスシタロプラム5mgの内服を開始し,めまいは消失した.
【考察】PPPDは,Barany Societyが2017年に診断基準を発表した慢性めまいで,立位姿勢や特定の頭位によらない能動的・受動的な動き,動体や複雑な視覚パターンを見たときに症状が増悪する.治療は,SSRI/SNRI,前庭リハビリテーション,認知行動療法がある.SSRI/SNRIの奏効率は50~75%とされ,また嘔気・嘔吐など副作用のため内服困難例も存在する.エスシタロプラムは,他SSRIと比較して副作用が少ない.症例1・2は,エスシタロプラムを少量内服し,内服後1~2週間でめまいは改善した.嘔気・嘔吐など副作用は無かった.
【結語】慢性めまいの鑑別にPPPDを挙げる必要がある.