[P-007] ギランバレー症候群の早期診断に筋電図検査F波測定は有用である
【背景】:ギランバレー症候群は、筋脱力などの軽い初期症状が出現し、次第に進行性に麻痺が出現し、重度の場合は呼吸筋麻痺、人工呼吸管理を必要とする疾患である。予後良好の疾患であるが、重度障害では約10%に介助を要する後遺症が残余するため、早期治療・早期診断は重要である。【症例】:生来健康な30歳女性。内服歴なく、職業は売店レジ。
【主訴】右上肢脱力【病歴】先行感染なく、2020年12月23日起床時から後頚部痛、24日昼頃から両手の痺れ・右肩挙上困難となり当院救急室受診。【所見】12月24日、右上肢優位の筋力低下が認められた。25日右上肢筋の筋力低下進行し、左上肢筋も筋力低下が認められた(Biceps0/3,Triceps0/3,Wrist Extensor0/3,Wrist Flexor0/3)、両下肢筋力低下はなし。筋電図所見:神経伝導速度 左右の正中・尺骨神経MCVの伝導速度、CMAPは正常、左正中・尺骨神経に遠位潜時遅延、両腓腹神経SCVは正常、F波は両上肢正中・尺骨神経左右共に出現率の低下と左上肢は出現率0、両下肢の出現率も低下。【経過】進行性の両上肢運動麻痺と四肢運動神経のF波異常所見より、ギランバレー症候群と診断し、発症3日目より5日間の免疫グロブリン大量療法を施行した。治療後は徐々に運動麻痺は軽快し1月29日退院となった。【考察】発症後、診断・治療に至るまでに3日間を要し、超早期の治療介入となった。7日以内に神経伝導速度検査を施行した文献では、MCV遠位潜時延長、H-Reflexの消失、F波異常(出現率低下、遠位潜時延長)が早期にみられると報告されている。症状出現後、早期に筋電図検査を施行し、症状(腱反射消失など)、髄液検査初見と併せて診断できれば、早期に治療介入ができ後遺症の合併も低く抑えられると期待できる。【結語】ギランバレー症候群の早期診断に筋電図検査(神経伝導速度とF波)は有用であり、重篤な神経麻痺や後遺症を予防できると考える。総合診療医として筋電図検査(神経伝導速度、F波)の習得は意義あることである。