[P-010] 多彩な病態を呈した高病原性Klebsiella pneumoniae感染症の1例
【背景】Klebsiella pneumoniaeの一部の血清型では厚い莢膜を有し, 好中球やマクロファージによる貪食に抵抗性を示す. 血行性播種, 膿瘍形成をきたしやすい特徴があり, 高病原性K. pneumoniaeと呼ばれている. String testを施行することで病原性を早期に判定することができる. 【症例】79歳, 男性. 【主訴】発熱, 呼吸困難, 全身倦怠感 【病歴】2型糖尿病, 前立腺肥大症等で当院通院中であった. X-9日に尿閉が出現し尿道バルンを留置された. X-4日に血尿が出現した. X-2日に発熱し, 近医で尿路感染症と診断され, セファクロルの内服を開始した. X-1日より体動困難となり, X日に当院へ搬送された. 【所見】来院時, 高熱, 頻脈, 頻呼吸, 酸素化低下を認めた. 血液検査では炎症反応高値およびDICの合併を認めた. 血液, 尿, 喀痰の培養からはいずれもstring test陽性のK. pneumoniaeが検出された. 胸腹部CTでは両側肺野に浸潤影, 膀胱周囲の脂肪織濃度上昇を認めた. 【経過】敗血症, 肺炎および尿路感染症と診断し, MEPMで治療を開始した. 薬剤感受性を確認後にABPC/SBTへ変更した. DICに対しては感染症の治療と抗凝固療法を行った. 熱型, 炎症反応が改善せず, 感染源の再精査のために造影CTを施行したところ, 前立腺膿瘍, 肺膿瘍, 感染性微小脳動脈瘤破裂を新規に認めた. 前立腺膿瘍に対し経直腸ドレナージを開始し, また組織移行性を考慮して抗菌薬をST合剤, CTRXへ変更した. その後, 熱型や炎症反応は改善傾向となり, 全身状態も良好となった. 肺膿瘍や感染性微小脳動脈瘤破裂は抗菌薬治療の継続のみで軽快した. 抗菌薬投与は計49日で終了し, 第59病日に退院した. 【考察】K. pneumoniaeを検出した場合はString testを施行し, 高病原性であれば, 転移性感染巣の存在を想定して検査や治療を行うことが重要である. 本症例では造影CTにて前立腺膿瘍を認めたため, ドレナージを施行するとともに, 組織移行性を考慮して適切な抗菌薬へ変更したことによって治療効果を得ることができた. 【結語】肺・前立腺に膿瘍を形成し, 感染性微小脳動脈瘤破裂も併発した高病原性K. pneumoniae感染症の1例を経験した.