[P-009] メトロニダゾールが有効であった全身性強皮症に伴う偽性腸閉塞症の一例
【はじめに】
偽性腸閉塞症(CIPO)は全身性強皮症(S S c)の内臓合併症であり、腸管内細菌叢の異常と腸管蠕動低下による激しい腹痛、嘔吐が主な病態であり、生命予後に多大な影響を与えるとされる。
本症例は、腹満、嘔吐発作を頻回に繰り返しており、著しくQuality Of Lifeが損なわれていた。様々な消化管機能調整薬を投与されていたが無効であったところ、メトロニダゾール投与によって著明な改善が見られたため報告する。
【症例】
症例:62歳(初診時)女性
主訴:腹痛、嘔吐
現病歴:以前より月に数回腹部膨満が出現し、月に1回程度強い腹痛と嘔吐発作を繰り返しており、モサプリドクエン酸塩等を処方されていた。2015年3月中旬に当院外来を受診、アコチアミド塩酸塩を追加処方されたが改善なく、当科受診した。
既往歴:2009 からSScと診断されて経過観察していた。糖尿病合併。
生活歴:飲酒無。喫煙無。
診察時現症:意識清明、呼吸音正常、心雑音無、腹部やや膨満し、鼓音あり、腸蠕動音減弱、圧痛なし。四肢・皮膚に異常なし。
検査所見:血算・生化学検査に異常なし。腹部XPで小腸ガス著明
治療後経過:SScに伴うCIPOを疑い、外来で定期フォローしていた。2016年からミノマイシンを併用していたが効果に乏しかった。2018年6月に文献的にメトロニダゾールが有効との知見を得て投与したところ、翌日より症状の軽快が見られた。その後嘔吐発作の出現なく、現在まで継続している。
【考察】 CIPOは消化管蠕動が著しく低下することにより、腹部膨満、嘔吐が長期にわたって持続する疾患概念である。原因としては特発性のほかに、全身性硬化症、アミロイドーシスなどが知られている。栄養療法、減圧療法などが試みられるが難治性であることも多い。メトロニダゾールは嫌気性菌感染症などに有効な薬剤である。SScに伴うCIPOに対し有効という報告から投与してみたところ著効した。症状再発、有害な副作用などは発生しておらず、QOLの著しい改善が得られた。
【まとめ】
メトロニダゾールはSScに伴う難治性のCIPOに対して有効な治療法の一つと考えられる。