[P-017] COVID-19感染症罹患後のステロイド減量中に発症したNocardia niigatensisによる皮膚ノカルジア感染症の一例
【背景】ステロイド減量中にNocardia niigatensisによる限局性皮膚ノカルジア感染症の一例を経験したため、報告した。【症例】82歳男性【主訴】足背の痛み【病歴】X年2月28日にCOVID-19感染症治療のため保健所より入院要請があり、同日入院となった。入院時酸素化低下があり、レントゲン及びCT検査にて両側肺野にすりガラス陰影を認めていた。 中等症として抗ウイルス薬及びステロイドの投与を開始した。その後も酸素化及び肺炎所見の増悪があることからステロイドを一旦増量とした。増量後の経過は良好であり、ステロイドは慎重に減量してく方針とした。3月14日より右足背に軽度の疼痛が出現したが、皮膚表面に変化なく経過観察としていた。しかし、徐々に疼痛増悪し、発赤腫脹も認めるようになった。【経過】3月17日に同部の穿刺を行ったところ、淡赤色膿汁が吸引されたため、同部の洗浄を行い、 CEZの投与を開始した。洗浄後は疼痛は軽減していた。洗浄を連日行っていたが、膿汁の培養にてグラム陽性桿菌が検出されたため菌同定を行ったところ、3月30日に起炎菌がNocardia niigatensisであることが判明した。疼痛自体は消失しており、増悪は認めなかったものの、CEZは効果なしと判断し、同日よりST合剤に変更した。画像検査上では肺などに明らかな菌腫などは認めず、リンパに沿うような拡大も認めないことから限局型皮膚ノカルジア感染症と判断した。その後は症状増悪なく経過し、ST合剤については3か月にて内服終了とした。【考察】限局型皮膚ノカルジア感染症は皮膚から直接侵入し、発症する。リスク因子としては野外での活動や動物咬傷、手術などであるが、本症例は外傷はなく、入院期間も長いことから院内発症の可能性を考慮し病室の環境培養も行ったが、菌の同定には至らなかった。【結語】ステロイド投与中の免疫抑制状態患者に発症した、院内発症や起炎菌としても稀なNocardia niigatensisによる限局型皮膚ノカルジア症を経験したため、報告した。