[P-028-2] 高齢者慢性心不全(HFrEF)に対するSGLT2阻害剤の有効性についての研究-有効であった症例報告も含めて-
高齢者心不全治療において糖尿病合併の有無とは無関係にSGLT2阻害薬:ダパグリフロジン10mg(Dap)が慢性心不全患者(HFrEF)の心不全イベント抑制に有効である事が2019年大規模ランダム化比較試験(RCT)により証明され心不全治療の新たな選択薬となった.
今回、我々はHFrEF症例9例{内訳:糖尿病合併:3例、非合併:6例}に対してDapを投与し心機能への影響、検査値の変動、長期予後、副作用につき検討した。投与時平均年齢は74.5歳(男:女;5:4)であり併存疾患は高血圧症、虚血性心疾患、慢性腎臓病などであった。投与後の観察期間は平均10.6ヶ月でありDap投与前後の心エコーによるEF(Tompson法)は平均39.8%から53.9%へと有意に改善しDap投与後の血中BNP値も全例とも経時的に低下した。投与後の観察期間において心血管死,非致死性脳卒中,非致死性心筋梗塞は認めなかった。なお本薬剤投与による脱水、脳梗塞、性器感染症などの副作用は特に認めなかった。
Dapの心機能改善のメカニズムは心臓への直接作用、腎臓を介した作用、血行力学的作用など多面的作用が心不全発症・進展抑制,予後改善に関与するとされている。特に(1)利尿作用(2)交感神経の調節作用(3)心筋エネルギー代謝改善作用(4)腎保護作用が重要であり、これら複合的作用により心臓の負荷 軽減,器質的/機能的改善が促進され早期の心不全予後改善に繋がるとされる。またDapは従来の心不全標準治療薬への上乗により早期から心不全入院や心不全悪化イベントを抑制し長期予後を改善する効果もあるとされる。
今回、我々は虚血性心疾患などの既往歴を有し、入退院を繰り返していた慢性心不全の73歳男性が急激な血圧低下にて救急搬送されたが、昇圧剤、利尿剤投与を中心とした治療によって急性期を離脱後にDapを中心とした内科的内服治療により心不全は症状しEF(37.6%→52.6%)及び血中BNP値(1540pg/ml→56Pg/ml)も改善し在宅へ復帰し、以後順調に経過した症例を経験したので症例を供覧するともに自験HErEF9症例におけるDap投与の有効性につき報告する。