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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-014] 直腸癌を契機に発症し驚くべきCT画像を呈した肛門周囲膿瘍の1例


【背景】肛門周囲膿瘍は様々な疾患が原因となり発症するが、その中には悪性腫瘍が含まれており評価の際には注意が必要である。
【症例】66歳男性
【主訴】下痢、肛門周囲の疼痛
【病歴】生来健康であったが3週間前より水様性下痢、2週間前から肛門周囲の疼痛、腫脹が出現し、改善しなかったため当院を受診した。同時に食欲低下を伴い、直前の6か月間で意図しない7kgの体重減少を認めていた。
【所見】体温38.4℃、血圧112/75 mmHg、脈拍数120 回/分で、腹部は平坦・軟で、圧痛はなく、その他に異常を認めなかった。肛門の7時方向に発赤、圧痛を伴う腫瘤を触知した。血液検査ではWBC 15,900/µL、Hb 11.1 g/dL、CRP 19.60 mg/dLであった。胸腹部造影CTでは直腸下部から肛門周囲にかけて軟部組織の腫脹と内部にairを伴う被包化された最大径85mmの巨大な肛門周囲膿瘍、瘻孔を認めた。
【経過】入院の上で絶食管理を行い、抗菌薬加療を開始した。入院2日目に実施した下部消化管内視鏡検査で直腸に全周性の潰瘍性病変を認め、病理組織学検査で直腸癌(高分化型管状腺癌、Stage IIIc)と診断した。入院4日目に人工肛門造設術を施行し、症状は改善した。
【考察】肛門周囲膿瘍の原因として、痔瘻、クローン病、外傷、悪性腫瘍が知られている。CT画像は肛門周囲膿瘍の診断には有用だが、CTのみでは肛門周囲膿瘍の原因の特定は困難であり、適切な治療ができない可能性がある。そのため、肛門部の視診と直腸診などの身体診察と内視鏡検査の所見を合わせて、診断するべきである。1990年の報告では肛門周囲膿瘍の原因として直腸癌の頻度は低いとされていたが、現在では悪性腫瘍の有病率が増加しているため、本症例のような症例が増加している可能性がある。
【結語】直腸癌が肛門周囲膿瘍を引き起こすことがあるため、肛門周囲膿瘍の症例では直腸癌を鑑別にあげる必要がある。また原因検索では、病歴、身体診察、CT検査、内視鏡検査の結果を総合して判断する必要がある。

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