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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-030] 急性巣状細菌性腎炎に続発し保存的加療により治癒した腰椎脊髄硬膜外膿瘍の1例


【背景】急性巣状細菌性腎炎に続発した腰椎脊髄硬膜外膿瘍を経験したため報告する。【症例】58歳男性【主訴】発熱、腰痛【現病歴】X年3月中旬より発熱と腰痛を自覚し当院外来を受診し経過観察となっていた。その後も症状改善なく持続するため4月1日精査加療目的に入院となった。【所見】体温:39.0℃、下部腰椎に叩打痛を認める。血液検査にて炎症反応上昇(WBC 11300 /μL、CRP 20.52 mg/dL)を認める。腰椎MRIでL5/S1脊髄硬膜外にDWIにて異常信号を認め、同部はT2 STIRで高信号を呈する。【経過】血液検査にて炎症反応上昇を認め、腰椎MRI所見と併せて、腰椎脊髄硬膜外膿瘍と診断した。第7病日に施行した腹部造影CTで右腎皮質に排泄相にて造影不良域認め、急性巣状細菌性腎炎と診断した。尿培養と血液培養からStreptococcus agalactiaeが検出され、同一の起炎菌が検出されたことから、急性巣状細菌性腎炎から血行性に進展した腰椎脊髄硬膜外膿瘍と診断した。身体所見にて運動感覚障害、膀胱直腸障害を認めなかったことから、脳神経外科と連携し、神経症状出現時に外科的ドレナージが施行できる準備をした上で、抗菌薬による保存的加療を選択した。第34病日、抗菌薬を内服薬に変更し退院となった。その後外来での経過観察とし2か月ごとに腰椎MRIを再検し、第138病日の腰椎MRIで異常信号は消失、終診となった。【考察】脊髄硬膜外膿瘍は神経症状を認めない例に対しては、抗菌薬治療による保存的治療が選択される。また本疾患は画像検査よりも神経症状の変化が治療法を選択する上で重要とされており、日々の身体所見を確認することが何よりも重要である。神経症状が出現した場合にはドレナージ術等の手術加療が必要となるが、本症例は脳神経外科と連携し、悪化時速やかに手術が行える体制を整えた上で、保存的加療で治癒した。【結語】急性巣状細菌性腎炎に続発し保存的加療により治癒した腰椎脊髄硬膜外膿瘍の1例を経験した。日々の診察と他科との連携を強化することで、より侵襲度が低い治療を選択し得た1例であった。

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