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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-016] 不明熱の原因となるカンピロバクター菌血症の臨床的特徴に関する多施設後方研究


【背景・目的】感染性腸炎の原因としてよく知られるカンピロバクター属は、ときに菌血症を引き起こす。希少性からその患者像や予後因子は殆ど分かっていないものの、心内膜炎、感染性動脈瘤、骨髄炎、化膿性関節炎などを合併し重篤化しうるカンピロバクター菌血症(CB)の臨床的特徴を明らかにすることを本研究の目的とした。【方法】2011~21 年に西日本の 3 つの総合病院でCBと診断された患者を対象として多施設での後方視研究を行った。特に消化器症状を伴わず不明熱(FUO)様の症状を呈するCBは診断が難しく総合診療的にもマネジメントに難渋するため、消化器症状随伴(GE)群とFUO群に層別化して検討した。【結果】男性24名、女性15名が対象となり,年齢中央値は57歳で,20歳代と高齢者の二峰性の分布であった。GE群(21名:53.8%)とFUO群(18名:46.2%)を比較すると、性別、年齢、基礎疾患などの患者背景に有意差は認められなかった。Campylobacter jejuniはGE群でのみ同定されたが、FUO群ではCampylobacter fetus、Campylobacter coliなど他の菌種も分離された。GE群に比してFUO群では、経静脈的抗菌薬投与を受けた患者の割合が47.6% vs 88.9%と多く、総治療期間(中央値:5日 vs 13日)および入院期間(7日 vs 21日)も有意に長かった。また、死亡した患者はいなかった。【考察・結語】既報と異なって菌種ではなく臨床症状からCBを層別化したことで、高齢者だけでなく若年者でもCBを発症しうること、そしてCBでは免疫不全などの基礎疾患がなくてもFUOを呈し、より長期間の加療を要することを新たに明らかとした。基礎疾患や消化器症状に乏しくてもCBを鑑別に挙げ精査する必要性が示唆され、FUOをよく診療する総合診療分野にとっても重要な知見になると思われた。

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