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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-028-1] 右坐骨神経痛として長年加療されていた右浅大腿動脈閉塞症の1例ー坐骨神経痛のpitfallとしての血管疾患ー


症例は62歳男性で既往歴に気胸にて胸腔鏡手術、膀胱癌にて経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行していた。既往歴として高血圧、肺気腫、糖尿病があったが糖尿病は未治療であった。201X年X月より右下肢疼痛、しびれが出現して近医を受診したところ腰椎椎間板ヘルニアに伴う坐骨神経痛と診断され、M市立病院整形外科へ紹介され椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症と診断され内服投薬されたが、症状の改善は認めなかったためにU市立病院整形外科を受診したところ診断は腰部脊柱管狭窄症との診断にて内服加療が開始された。しかし症状の改善は全く認めず 歩行障害、右足底部の冷感、疼痛、しびれが強く202X年X月XX日に当院総合診療科を受診した。受診時所見は心音:収縮期雑音(Levine II/IV)呼吸音:清、下肢:振動覚・痛覚異常なし、膝蓋腱反射・アキレス腱反射異常なし、Lasegue 試験110°にて陽性であったが右大腿動脈、右膝窩動脈、右後脛骨動脈、右足背動脈いずれも触知不可、ドップラーにても聴取不可であった。胸腹部CTでは  肺気腫、肺嚢胞 右胸膜肥厚、 左冠動脈起始部以遠(LAD 、LCx)の石灰化があり下肢血管造影CT/3D-CTAでは右総大腿ー浅・深大腿動脈分岐部にかけて石灰アテロームによる高度内腔狭窄、両側浅大腿動脈の遠位側で壁石灰化、両側下腿3分枝動脈に壁石灰化を認めた。ABIは右足 0.50 左足 1.00 CAVI 右 10.1左 9.9であった。入院後に前医の内服を中止してベラプロストNa錠20μg、トラムセット、リリカを少量投与したところ症状は軽度軽快したが、右総大腿動脈の高度狭窄に対してX月XX日全身麻酔下に血栓内膜摘出術を施行した。血栓をすべて除去して総・浅・深大腿動脈のback flowを確認後に動脈切開部を縫合閉鎖した。術後、大腿動脈以下足背動脈、後脛骨動脈は触知可であり右足底の痺れ、疼痛、冷感も軽減した。本症例は複数の医療機関にて症状から整形外科的疾患のみに注意が注がれ血管疾患を見逃した貴重症例であった。間欠性跛行、下肢のしびれ、疼痛は常に血管疾患を念頭に置く必要があると考えられた。


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