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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-068] 骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に伴う脊椎硬膜下血腫の一例


【背景】2021年時点での椎体骨折発生率は70歳代男性で10.8%、女性では22.2%とされ、認知症や脳血管疾患、糖尿病等の併存も多く、ADL低下・フレイルの進行から骨粗鬆症性椎体骨折発症5年後の累積死亡率は72%という報告がある。椎体骨折は病院総合診療医と各診療科の連携による診療が不可欠な疾患と考える。今回、骨粗鬆症性椎体骨折に脊椎硬膜下血腫が合併した非常に稀な病態を保存的に治療し得たので報告する。
【症例】86歳、女性
【主訴】右腰背部痛と体動困難及び便秘
【病歴】2日前に自宅敷地内で転倒して右腰背部を受傷。疼痛が強く、前日に他院するも、骨折を指摘されず帰宅。その後も体動困難で排泄にも支障を来たし、当院に救急搬送された。
【所見】意識晴明で明らかな四肢麻痺なし。右臀部に皮下出血と圧痛を認め、動作時に胸腰椎移行部に強い疼痛を訴えた。腰椎単純レントゲン写真で下位腰椎の側彎症と、第12胸椎の圧迫骨折を認めた。脊椎MRIでは、第12胸椎で新鮮骨折が認められ、第1腰椎から第4腰椎上端まで及ぶ硬膜下血腫が認められた。骨粗鬆症性椎体圧迫骨折と脊椎硬膜下血腫の診断で入院。
【経過】両下肢の麻痺の出現は認められなかったが、約2週間後のMRIでも血腫は残存していた。コルセット装着とリハビリテーションを行い、第41病日に自宅療養の調整目的とリハビリテーション継続を目的に転院。受傷3ヶ月後にMRIを再検する予定で、現在は当院外来に通院中である。
【考察】椎体骨折は高齢社会では日常的に遭遇する疾患だが、脊椎硬膜下血腫の合併は極めて稀である。本症例は保存的に治療し得たが、症状悪化の可能性があり、常に観血的治療を考慮しておく必要がある。側彎があり、前方への圧迫力以外の外力が椎体や脊柱に加わったことも、硬膜下血腫の原因の一つと考える。
【結語】椎体圧迫骨折に伴う脊椎硬膜下血腫では進行性に脊髄障害へ進展する可能性があり、常に観血的治療への配慮が必要である。高齢者で骨粗鬆症や椎体変形を有する場合には、積極的なMRI評価を推奨する。

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