[P-024] 右心系のリモデリングを合併した左室収縮の保たれた心不全(HFpEF)の一例
【症例:90歳、女性】
【主訴】呼吸困難
【既往歴】総胆管結石
【現病歴】以前より下腿浮腫を認め、近医クリニックで経過観察されていたが生活に支障はなかった。浮腫の増強で当院総合内科外来を紹介受診、その際に施行した経胸壁心エコー図検査では左室収縮は保たれていたが(LVEF70%)、E’低値(4.2cm/s)、E/E’高値(17.6)、左房軽度拡大(37.2ml/m2)、三尖弁逆流速度高値(4m/s)などから左室拡張不全(HFpEF)が示唆された。また右心系拡大(リモデリング)を認め、著明な肺高血圧症(推定肺動脈収縮期圧74mmHg)を呈していたことから利尿剤(フロセミド)の内服治療を開始、BNP値は130pg/mlと軽度上昇していたが呼吸状態は安定しており、外来経過観察となった。しかし、約3か月後に呼吸困難を主訴として救急外来受診、胸部レントゲンでは心拡大と両側肺うっ血、BNP値は1399pg/mlと異常高値を来し、心不全の病態進行に伴った呼吸状態悪化と判断して緊急入院となった。ベッドサイドで施行した心エコー図検査では左室収縮は保たれていたが、推定肺動脈圧74mmHgと肺高血圧症は持続、右室拡大と壁運動低下を併発、左室短軸像では心室中隔の扁平化によるいわゆるD shapeの所見を認めた。肺塞栓症の合併を考慮して造影CT検査を施行したが、肺動脈内に明らかな血栓像は認めなかった。Qp/Qsも正常値でシャント性疾患は否定的であった。フロセミドと硝酸イソソルビドによる点滴治療を開始、第7病日で酸素化良好となり、呼吸状態は安定したため酸素オフとした。再度施行した心エコー図検査では、右室拡大や壁運動低下も改善(右室面積変化率FAC 21→27%、TAPSE 14→16%まで改善)、三尖弁逆流も軽減、推定肺動脈圧は50mmHgまで低下した。その後治療薬は内服投与に切り替え、心臓リハビリを行い、軽快退院した。【結論】HFpEF症例における右心不全の進行は予後不良と考えられており、本症例のように適切な治療介入で右心系のリバースリモデリングさせる事が重要と考えられた。