[P-057] タゾバクタム/セフトロザンの立ち位置を考える
タゾバクタム/セフトロザンは2019年1月に本邦で製造販売承認を取得した、注射用セフェム系薬としては24年ぶりの薬剤である。当初より緑膿菌やESBL産生あるいはAmpC産生腸内細菌の治療においてカルバペネム系抗菌薬の代替薬としてその潜在力が期待されたが、問題はカルバペネムに比べ本剤の臨床実績が乏しいことである。当院では2019年6月から採用され、これまで6例で使用している。(2020年12月から2022年3月は供給停止のため使用できず。)2例はampC産生腸内細菌科細菌、2例はESBL産生腸内細菌科細菌が検出されている症例でカルバペネム系抗菌薬の長期使用回避のため、1例はカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(non-CPE)が検出されている腹腔内膿瘍、1例はカルバペネム耐性緑膿菌肺炎に使用された。カルバペネム系抗菌薬の供給不足となった2022年9月以降、使用頻度の増加が予想されるため、臨床実績を重ねることでより適切な使用機会を見つけていく必要がある。またタゾバクタム/セフトロザンが,カルバペネム系抗菌薬の代替薬となることで,その使用量を抑制し,感受性を回復させることができるかもしれない。一方でコストの観点では、当院採用のカルバペネム系抗菌薬であるメロペネムの後発品通常量薬価に比べ、約6-12倍と高価であり、カルバペネム使用量抑制において大きな障壁となってくるであろう。