[P-025] 特発性多中心性Castleman病にステロイドパルス、トシリズマブ導入も敗血症で死亡した一例
【背景】特発性多中心性Castleman病 (iMCD)は,診断・治療法が確立し,トシリズマブ (TCZ)導入で予後が改善した.【症例】48歳男性【主訴】全身性浮腫【病歴】入院12年前に慢性炎症と多クローン性γグロブリン血症を指摘された.入院4年前に前医へ入院し炎症反応,IL-6,IL-2R高値,胸腹部CTで全身性リンパ節腫脹を認め,リンパ節生検で,iMCDの診断となった.プレドニゾロン(PSL) 25 mgから開始し, TCZ導入目的に当院へ紹介受診となった.しかし,遠方であり,仕事や経済的理由でTCZ導入を見送っていた.糖尿病,気管支喘息ありアザチオプリン併用も入院2ヶ月前に主訴と高度蛋白尿,慢性下痢となり,精査加療目的に入院となった.【所見】1か月で14 kgの体重増加, 全身性浮腫を認めた.血液・尿検査では貧血,腎機能障害,高γグロブリン血症,炎症反応高値,IL-2R 3070 U/mL,IL-6 1660 pg/mL,ネフローゼ症候群を認めた.【経過】腎生検後にステロイドパルス療法を施行し, PSL 0.8 mg/kg/日で後療法を行うも改善は乏しかった.腎生検でiMCDによる2次性アミロイドーシス,慢性下痢も腸管組織へのアミロイド沈着によるものと診断された.入院6日目よりTCZを追加し,尿蛋白の改善を認めたが,透析導入となり,入院23日目に敗血症性ショックで集中治療管理を行うも,多臓器不全で入院41日目に死亡した.【考察】iMCDのよる腎機能障害は膜性増殖性糸球体腎炎、血栓性微小血管症による報告が多いが, 2次性アミロイドーシスであった. 重篤なiMCDに対しては高用量ステロイドとTCZが有効とされる.しかし,過度な免疫抑制により致死的感染症に陥る危険性がある.また,TCZ導入が遅れると,免疫抑制による敗血症や原病に伴う多臓器不全で死に至る可能性がある.【結語】iMCDに対しTCZ導入が遅れ,臓器障害改善に乏しく,敗血症性ショックにより死亡した一例を経験した.早期診断に加えて臓器障害出現前の早期にTCZ開始することが予後改善に重要と考える.