HOME

2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-027] 両下腿浮腫を契機に診断されたマントル細胞リンパ腫の一例


【背景】
高齢者の両下肢浮腫の原因は60%以上が慢性静脈不全である. 心不全を除く全身性の原因ははるかにまれであるため, 利尿剤を投与され対処されていることが多い.
【症例】81歳女性
【主訴】両下腿浮腫
【病歴】
2021年11月頃より両下腿浮腫が出現した. 高血圧症の既往があり, 家族歴に特記事項はなかった. 3-4カ月で徐々に増悪, 胸, 腹部症状はなかった. 近医内科を受診し, 血液検査, 尿検査にて異常所見なく, 特発性浮腫としてアルダクトン, フロセミド投与で経過観察の方針となった. その後改善が見られないため精査目的に2022年3月当院総合診療科を受診した.
【所見】
身長 151 cm, 体重 46 kg. 体温 36.2度, 脈拍 70 /分,整. 血圧 147/64 mmHg. 呼吸数 12 /分. 頚静脈怒張なし. 甲状腺腫大, 圧痛なし. 全身に明らかなリンパ節腫脹を触れず. 心音純. 下腿に両側圧痕性浮腫1+あり.
甲状腺機能, 腎機能, 肝機能は正常範囲内. TP 6.3 g/dL, Alb 3.3 g/dL, BNP 22.9 pg/mL, Dダイマー 2.5μg/mL. 尿蛋白陰性の他, 核膜の不整を伴う異型リンパ球5%が検出された. 胸部レントゲンは心胸郭比 55, 胸水や肺炎像なし. 12誘導心電図は洞調律で異常所見なし. 心エコーでLVEF 71.2%で明らかな弁膜症なし. 胸腹部造影CTで多発リンパ節腫脹を認めた.
【経過】
CT所見より悪性リンパ腫を疑い, 血液内科へコンサルテーションを行った. PET-CTにて, 多数のリンパ節に集積を認めた. 骨髄生検ではCD5+/19+/20+/22+/23+/κ+ , CTガイド下腹腔内リンパ節生検ではt(11;14)であり, マントル細胞リンパ腫の診断となった.
【考察】
本症例は悪性リンパ腫による消耗性の低蛋白血症が下腿浮腫の一因であると考えられた. マントル細胞リンパ腫患者の75%は診断時にリンパ節腫脹を認め, 約1/3はB症状を有する. 本症例ではこれらが認められず, 診断を難しくした. 一方で原因不明の高齢者の下腿浮腫に対して利尿薬で対処せず, 原因精査を行う重要性を再認識させられた一例となった.
【結語】
原因不明の高齢者の下腿浮腫は利尿薬で対処せず, 原因精査を行うべきである.









戻る