[P-029] 全身性強皮症患者に発症した非典型的溶血性尿毒症症候群の一例
【背景】48歳 びまん性全身性強皮症,間質性肺炎
【症例】50歳女性
【主訴】呼吸困難感
【病歴】X年3月より間質性肺炎の増悪につきシクロホスファミド大量療法を実施するも,7月12日には心嚢液貯留増加につき中止となった.7月23日の定期受診時に血小板減少を指摘され,7月30日には呼吸困難感,全身浮腫が見られたため入院となった.
【現症】
【検査所見】血小板数9.5万/μL,Cre0.98mg/dL,間接ビリルビン1.0mg/dL,MCV91.5fL,PT-INR0.93,破砕赤血球+,ハプトグロビン検出感度以下,LDH602 IU/L,ADAMTS13活性37%,血清補体価15,志賀毒素抗原―,レニン活性9.1ng/mL/hr,アルドステロン95.7pg/mL.
【経過】入院当初は腎クリーゼを疑いACE阻害薬の大量投与を開始したが,治療に反応せず血小板数の低下,腎機能の悪化が進行した.PLASMICスコアが5点の中リスクとなったため,8月16日からは二次性血栓性微小血管症(TMA)を疑い血漿交換(PE)を7日間行うも血小板数は改善せず,全身浮腫,呼吸不全をきたしてICUに入室した.そこで8月23日からは非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を疑いエクリズマブを投与したところ,腎機能,血小板数が改善し,全身浮腫も軽快した.後に遺伝子検査でaHUSと矛盾しない遺伝子変異が判明した.
【考察】aHUSは補体活性化因子の遺伝子変異による異常と,場合により感染などの誘発事象が組み合わさってTMAを引き起こすとされており,PEでも難治で致死率の高い疾患とされてきた.しかし補体活性化を抑制するエクリズマブの登場により,コントロール可能な病態となったため,早期の診断とエクリズマブによる治療開始が重要である.
【結語】びまん型全身性強皮症における腎障害において,PEに対する治療反応性が不良の場合には,腎クリーゼ,二次性TMAのみならず,aHUSの可能性も考慮する必要がある.