[P-049] G群β溶血性レンサ球菌による軟部組織感染症の一例
【背景】高齢女性における軟部組織感染症を伴う劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の一例を経験したので報告する。【症例】86歳、女性。【主訴】両下肢の腫脹と疼痛。【病歴】両下肢の腫脹と疼痛、悪寒を認め近医を受診。蜂窩織炎が疑われ当院紹介受診となる。【所見】身体所見では両下肢の腫脹と発赤を認め、発赤部位に一致して熱感、自発痛、圧痛を認めた。血液検査では炎症反応の軽度上昇を認めた。下肢単純CTでは皮下組織の脂肪織濃度上昇を認めた。【経過】蜂窩織炎と診断し第1病日よりセファゾリンナトリウムの投与を開始。第2病日に意識障害、血圧低下、頻呼吸を認めた。血中乳酸値の上昇を認め、血液培養からβ溶血性を示すレンサ球菌が検出された。敗血症性ショックと考え、ノルアドレナリン投与、人工呼吸管理など集中治療を開始。抗菌薬はβ溶血性レンサ球菌の第一選択としてアンピシリン、抗毒素作用のためにクリンダマイシン、複合感染のカバーのためにメロペネム水和物を選択。血液培養からはG群β溶血性レンサ球菌であるStreptococcus dysgalactiaeが同定されSTSSと診断。炎症反応は第4病日でピークアウトし、第7病日にノルアドレナリン離脱、第8病日に抜管。以後、経過良好であり第42病日にリハビリテーション病院へ転院となった。【考察】STSSは病態が急速に進行するため、迅速かつ適切な対応が求められる。本症例においては患者の急変を見逃さず、早期から抗菌薬投与を中心とした集中治療を開始できたことが患者の救命につながったと考える。また、STSSでは重症軟部組織感染症を合併することが多く、壊死所見が認められた場合には外科的ブリードマンが必要となる。本症例でも外科的処置が考慮されたが、壊死所見に乏しいこと、抗菌薬投与により皮膚所見の広がりは認めず炎症反応は順調に改善したことから施行しなかった。結果として患者の早期からのADL改善に寄与したと考える。【結語】蜂窩織炎は原因菌次第で重症化の可能性がある。症状の増悪を見逃さず早期治療介入を行うことが重要である。